洗顔において、泡は必要なのでしょうか?
洗顔料はもこもこに泡立てなければもいけないのでしょうか?
本記事では、泡が洗顔に及ぼす影響について、科学的に解説したいと思います!
泡の役割を知って、肌にやさしい洗顔方法をマスターしましょう!
Index
1.泡立つ界面活性剤とは?
ちょこちょこ触れてきた話題ですが、界面活性剤と一口に言っても、大きく4種類に分けることができます。
親水基と呼ばれる、水と馴染みやすい部分のイオン性によって分類されているのですね。(水色の丸)
実はこの中で、泡立つのは陰イオン型と、両性イオン型界面活性剤。
もしくは若干カチオン型も泡立つかもしれません。
その理由は泡の構造にあります。
2.泡の構造を見てみよう!
泡の正体は、界面活性剤によって形成される電気二重層です。
水を介して界面活性剤の親水基が集合しているのです。
放っておくと、水も界面活性剤も重力によって下方向に引っ張られ、
膜は薄くなり、やがて崩壊します。
ところが、親水基がイオン性を帯びている場合、
膜が薄くなると矢印(↔︎)のように、親水基のイオン同士が静電気的反発をして膜を安定に保つことができるのです。
このことからわかるのは、ノニオン型界面活性剤では泡が立ちにくいということ。
現に、ノニオン系は消泡剤としても利用されています。
また発展させて考えると、アミノ酸系界面活性剤よりもサルフェート系界面活性剤の方がよく泡立つのは、サルフェート系の方がイオン性が大きいから、と言えます。
3.泡立ちがいい洗浄剤のメリットとは?
さて、この泡が何に役に立つかというと、下記4点が挙げられます。
- 摩擦力の減少
- 洗浄効率の向上
- 刺激性の低下
3-1.摩擦力の減少
上図の通り、泡は空気を多分に含んでおり、ふわっふわです。
お肌は摩擦によるダメージを大変嫌いますが、”摩擦”は力が加わらないと発生しません。
つまり、泡を介して洗浄することで、手の力が直接肌に伝わりにくくなるため摩擦が低減されるのです。
もちろん摩擦力はゼロではありませんが、シャンプーや洗顔の広告等でたまに謳われる「泡による摩擦ダメージ」のフレーズには疑問を感じます(^^;)
3-2.洗浄効率の向上
泡立つことで洗浄効率が上がる理由は2つあります。
1つは、泡によって表面積が大きくなり、洗浄剤と汚れの接触頻度が上がるから。
泡の構造を見てみると、空気に向かって「疎水基」が突き出ているのがわかります。
洗浄をする際に、汚れと馴染むのはこの疎水基の役割です。
泡をたくさん作るということは、疎水基が飛び出た空気の層をたくさん作るということ。
泡がきめ細かいと、泡の表面積が大きくなることで効率よく汚れを落とすことができるのです。
洗浄効率が向上する2つ目の理由は泡はきめ細かくなる程皮脂を吸着するからです。
界面活性剤による洗浄メカニズムは「界面活性剤が汚れを取り囲んで洗い流す」が鉄板です。
ところが、2017年に発表された花王の研究によって、泡が汚れを落とすメカニズムがもう一つあることが発見されました。
まずは、動画をご覧ください!
このように、きめが粗い泡と比較して、きめ細かい泡はぐんぐん油を吸い込んでいることがわかります。
その理由は泡はきめ細かくなるといびつになるから。
動画を見ても、左の泡は少しいびつな多角形なのに対し、右の泡は真ん丸です。
物理化学的に、泡は表面積が最小となる球体が最も安定であることが知られています。
いびつな形の泡は、球体になるために油を吸引する物理的な力が働いていると考えられています。
このメカニズムを知った時は面白すぎて、キュンキュンしたことを覚えています😂笑
花王さんのHPではさらに詳しく、わかりやすく説明されているのでご興味の有る方はこちらをご覧ください!
▶【特集:泡】泡で汚れは落とせない? 化学界も驚愕の新常識
「できっこない」を覆す研究員の底力(前編)
3-3.刺激性の低下
洗浄により刺激となる理由は大きく2つ考えられます。
1つは、過度な洗浄により肌の保湿成分を奪いすぎてしまい、肌状態が悪くなるから。
2つ目は、界面活性剤が皮膚に吸着するからです。
1つ目については下記のような対策が考えられます。
- 肌にあった洗浄力の洗浄剤を選ぶ
- 洗浄時間を短くする
- 洗浄頻度を減らす
2つ目については、本記事のテーマである「泡」が関係してきます。
界面活性剤は、水中では濃度によって状態が変わります。(下図参照)
イラストを見ると、球を作っている界面活性剤と、
一人でぷかぷか浮いている(遊離している)界面活性剤があります。
角層に吸着する可能性がある界面活性剤は後者です。
前者は、疎水基が内側を向いているため皮膚に入り込むことはありません。
ところが、後者はむき出しの疎水基が皮膚に吸着されてしまうのです。
きめ細かく泡立てるということは、泡の表面積が大きくなるため使われる界面活性剤も多くなります。
そのため、皮膚刺激となり得る遊離の界面活性剤を減らすことができるのです。
同じく花王の研究によって、泡のきめが細かくなるほど皮膚の吸着量が減少することが確認されています。
このように、泡をよく立てることで「洗浄力の向上」と「刺激性の低減」という、一見すると相反するものを両立させることができるのです!
3-4.pHの緩衝
これは文献が見つからず推測の範囲ではありますが、
石鹸のようなアルカリ性の洗浄剤 の場合、手で泡立てることで弱アルカリ性を中性に近づけ、刺激性を低減できる可能性があります。
通常の肌は弱酸性のためです。
ただ、石鹸で洗浄した後は皮膚は弱アルカリ性に振れることが知られているため、
どれくらい影響があるかわかりません(^^;)
弱アルカリ性に傾いた肌は、皮膚常在菌等の働きにより弱酸性に戻る性質があるのであまり心配いらないかもしれません💦
4.泡立つ製品ほど良い製品ではない。
以上から、私は洗浄剤はしっかり泡立てることを推奨しています!
ですが、「泡出てる」ことに躍起になる必要はないとも考えています。
同じ洗浄剤の場合、しっかり泡立てた方が良いことは確かですが、
アイテムが変われば配合されている保湿剤や増粘剤など泡立ちに関わる成分も変わりますし、
そもそも洗浄成分自体も変わるので洗浄力や刺激性は横並びに比較できないためです。
自分に合った洗浄力や使いやすさ、洗い流した後の後肌感など、好みはひとそれぞれ。
もこもこに泡立てないと綺麗になれない!なんてことはありません。
まず、自分に合った洗顔料やボディーソープを見つけること。
その後で、もっこもこの泡をお楽しみくださいね✨