【美容師法】資格が必要な仕事といらない仕事(厚労省へ確認)

先日、美容師法についてTwitterで発言をしたところ、大きなご反響を頂きました。

この内容について、
「この場合はどうなの?」
「こういう人いるけど駄目なの?」
「このままだとヘアメイクアーティストになれないの?」
など、沢山のお声を頂きました。

ご回答について、推測でお答えする責任範囲を超えていると判断し、厚労省に直接お問い合わせをして確認させて頂きました。
(二度に渡る突然のお電話にご対応頂いた職員の方、誠にありがとうございました)

大前提、下記の内容についての判断は私のような一個人でされるものではなく、各都道府県の自治体が判断するものになります。
その点を十分にご留意頂き、特定の誰かを攻めたり資格の有無を探るのではなくご自身が綺麗になるためのサービスの選択法を知った上でビジネスをどう組み立てるかの参考としてお役立て頂けますと幸いです。

また末尾には発言の意図と、メッセージを添えさせて頂いております。
宜しければ最後まで御覧ください。

1.美容師法とは

「美容師法」とは、昭和32年に制定された「公衆衛生の向上」を目的とした法律です。

一部抜粋・要約をすると、

・「美容師」とは「厚生労働大臣の免許を受けて美容を業とする者」
・「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること
・業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。
・美容師は、美容所で美容を行わなくてはならない。

文書には書かれていませんが、美容行為は「首より上を美しくすること」と定義されています。
「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法」とは、首より上を美しくする行為の方法の例を挙げているだけということです。

また美容所の開設や廃止は、行政への届け出が必要となります。

 

美容を仕事にしている、また仕事にしよう考えている方で、「首から上を綺麗にする仕事」に関わる方は、概要でも良いので必ず読むことをお勧めいたします。

美容師法 概要は10分かからず目を通せます!

2.友人同士のヘアメイク等に資格は要らない

美容師法に関わるかのポイントは

  • 美容行為であるか
  • 美容を業としているか

この2点です。

当然ながら、友人同士や子供への髪結やメイクは「業」ではないので、美容師免許は必要ありません。

同様に、Youtubeでメイクをして公開すること自体も、相手が友人等であれば美容業に当たりませんが、
モデルを公に募ったり、メイク動画がメイクレッスン等のプロモーションとなっていれば、美容業となってしまいます。

以下、「3.美容師免許がいらない仕事」「4.美容師免許が必要な仕事」については、
厚労省に直接お問い合わせし、ご回答頂いた内容です。

3.美容師免許が要らない仕事

美容師免許がない状態でも職業成立しているお仕事例は下記の通りです。

・美容部員、ビューティーアドバイザー

化粧を施す目的が「商品の販売」であることから、美容業に該当しないと解釈されているそうです。

・メイクアドバイザー/インストラクター(指導のみ)

メイクの方法を指導するのみの業務であれば、美容業に該当しません。

気をつけなくてはいけないのが、お客様の顔に触れながらメイク方法を教える行為は美容業となることです。

また、モデルを立ててメイク方法を指導する場合、
モデルに友人を起用し、同意の元でメイクを施す場合は美容行為に該当しませんが、
モデルを公に募り、メイクを施す場合は美容行為となるそうです。

・ネイリスト、エステティシャン

美容行為の定義が「首より上を美しくすること」とされているため、
爪や身体を美しくするネイリスト、エステティシャンは美容業には該当ないということになります。

4.美容師免許が必要な仕事

「学校では要らないと言われた」
「先輩や仲間内で資格を持っていない人は多い」
「SNSでよく見かける」など、特に多くのご質問を頂いたお仕事です。

個人的な意見や推測ではなく、ご回答頂いた内容を紹介します。

・一般の方向けのヘアメイク

撮影前、成人式、ブライダル、メイクスクール問わず、業として一般の方にヘアメイクをする仕事は美容業に該当します。

美容業である以上、「美容所」で仕事をする必要があリ、自宅やレンタルオフィス等で営業することはできません。
※「メイクセラピー」に記載の通り、出張が可能な場合があります。

・紙媒体撮影メイク・ショーメイク・映像撮影メイクなどでのヘアメイク

特に「資格は要らない」とご判断されている方が多くいらっしゃるのがこのお仕事でした。

解釈の一つとして、「公衆衛生の向上が目的である美容師法において、特定のタイミングにおける一時的な演出の一環としての施術行為は美容業に該当しない」というものがあるようです。

厚労省からの電話回答では「容姿を美しくする行為であるため、美容業である」とのことでした。

・眉毛・まつ毛関係の施術

これについてはご存知の方が多くいらっしゃいました。

特に、まつ毛エクステはトラブル事例が多く、国民生活センターから注意喚起も出されています。

「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危害」

・メイクセラピー

近年、介護施設や病院等でメイクを施すことでコミュニケーションを測ったり、QOL向上を測る「メイクセラピー」の機会が増えています。
関連する研究も盛んで、次々と効果が実証されています。

結論、顔にメイクを施す以上、美容行為となるようです。

上記に美容は美容所で行う必要がある旨を記載しましたが、

“都道府県(保健所設置市又は特別区にあっては、市又は区)が条例で定める場合には出張して行うことができる。”
(美容師法 概要 一部抜粋)

とあることから、各地の自治体に確認の上、施設へ出張することは可能となります。

 

5.法の解釈は自治体が行う

繰り返しになりますが、美容師法に適合か否かの判断は各都道府県の自治体が行います
判断するのは”人”ですから、法の解釈によっては異なる判断となる可能性もあります。

というのも、昭和32年に法律が制定されてから、通知・通達により細かな取り決めは変わっているものの時代背景が現代とは完全に異なっている訳で、
「公衆衛生の向上」を目的とした場合に、「美容業に該当しない」と解釈されている業務もある訳です。

具体的な職業名を挙げると誤解を招きそうなので控えさせていただきますが、
ご自身のお仕事内容に不安がある場合は、自治体へ確認されることをお奨め致します。

6.美容師法に違反すると罰金刑の可能性がある

美容師法には、下記の記載があります。

“第十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第六条の規定に違反した者
(後略)”
“(無免許営業の禁止)
第六条 美容師でなければ、美容を業としてはならない。”

つまり、摘発時には三十万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

 

7.美容師以外が美容業をすることの懸念点

昭和32年に制定された法律が、現代の状況に必ずしも適合しているとは、思っていません。

メイクアップによるトラブル事例よりも、メイクを施してもらって幸せになっている人が圧倒的に多いから、摘発されることもないし行政から指導されることもないのだと推測しています。

判断が都道府県の自治体ということからも、SNSの管轄が定まっていないのも理由の一つなのかもしれません。
そのためか、いわゆる「グレーゾーン」が出来上がってしまっています。

ですがやっぱり、私は駄目なものは駄目だと思います。

その理由は、大きく二つあります。

7-1.資格無しでの美容業は常にリスクを背負っている

無資格のまま、その道でプロフェッショナルとなった方は、いつ摘発されてもおかしくないというリスクを背負いながら仕事をしていることになります。
自分と関係のないところで大きなトラブルが起きた時、それがきっかけで規制が厳しくなる可能性があることも、考えておかなければいけません。

グレーゾーンが膨らみすぎるがあまり、法律を知らないまま突き進む人がどんどん増えてしまうと、後戻りが出来ずに困ってしまう方が増えるのではないかと懸念しています。

過去には、パーマの業権を争って、美容側が理容側を摘発するという「パーマ戦争」というものが起こったそうです。
※現在ではヘアカットも一緒に行うなら理容師でもパーマネントウェーブ施術は可能となっています。
(参考)「理美容業界の規制緩和の必要性について」

美容師さんが競争相手を市場から排除するために摘発を始めたら、勝ち目はありません。

7-2.有資格者と無資格者が同じ市場の競争下に置かれる

本来、美容業に美容師免許が必要であることで、消費者は一定基準以上の技術や知識を持つ者のサービスを受けることが可能になります。

しかし、いくら技術や知見を培ったとしても、継続的な自己研鑽が無いと廃れていってしまいます。
それは美容に限らず、どの世界でも同じことです。

逆に言えば、資格を持たずとも、メイク検定や専門学校などで自己研鑽をすることで、有資格者よりも優れた技術を持つ方が現れてもなんの不思議もありません。
「お客様を幸せにする」という点では、資格の有無より自身の努力が必要と言えます。

しかしながら、ヘアカットは美容師の仕事として守られているのに、
ヘアメイクは何故か守られず、一般のサービス提供者との価格競争にさらされていることには違和感があります。

美容師免許の資格取得に金銭的や時間的なハードルが高すぎることが原因とも考えられますが、
だからこそそれを乗り越えた資格者の方々の仕事は守られるべきではないかと思うのです。

8.本発言で伝えたかったこと

私がTwitterを通じてお伝えしたかったことは、「資格を持っていないならば、美容の仕事をするな!」ということではありません。
「美容師資格がないけど、美容業をする」を当然のようにしてほしくなかったのです。

夢を持って美容の仕事を志す方が何も知らずにリスクを背負うのではなく、
仕事の方法や表現の仕方を工夫するのが、あるべき姿であると考えています。
※「バレなければいい」を推奨している訳ではありません。

お客様を幸せにする方法は、直接ヘアメイクをすることだけではありません。
・お客様の顔に触れず、メイクの方法を指導するに留める
・美容部員としてお客様の綺麗をお手伝いする
・商品の販売を通じて綺麗へ導く

或いは、基本の技術と知識を学んで、資格を取得するのも一つだと思います。

 

私の友人にも、メイクを業とされている方は数名いらっしゃいます。

そのような方々にご迷惑をかける可能性がある中で(こんなに反応を頂くとは思っていませんでしたが)、発言をさせて頂いたのは「知らなかった」がこれ以上当たり前になって欲しくなかったからです。

このことを伝えたことが正しかったのか、誰かを幸せにすることだったのか、
色々悩み、美容師法制定の歴史を調べたり、コメントを何度も見返したりしました。

私自身、完璧な人間ではないのに偉そうなまとめをして恐縮ではありますが、
美容業界にポジティブな風が吹くような知識となれば幸いに思います。