昨今、InstagramやTwitterなどのSNSを通じて美容クリニックによるPR広告が増加しています。
今日は、美容系インフルエンサーが知っておくべき 【医療広告ガイドライン】についてポイントをまとめていきたいと思います。(自戒を込めて)
法の解釈に誤解がなきよう、該当する文書も記載して参りますので、必要箇所は是非本文をご確認ください。
長文ですので、読むのが面倒な方は「チェックポイント」だけでも御覧ください(^^)
※以下は美容インフルエンサーさん向けの内容です。
美容クリニックのHP等には「広告可能事項の限定解除の具体的な要件」が適用され、内容が複雑になるのでここでは解説しません。美容クリニック発信の広告には全ては当てはまらない旨ご了承ください。
Index
1.気をつけて!気づかぬうちの違反広告
本記事を執筆するに至ったのは、自身の体験談にあります。
InstagramやTwitterなど、SNSのフォロワーさんが増えてくると様々なPR案件のご連絡を頂くことが増えてきます。
最近は美容医療に関するPR案件が多く、興味のある内容を受けてみることにしました。早速Instagram投稿したところ、友人から「医療広告ガイドラインに違反してるよ💦」とご指摘を頂きましたm(_ _)m
化粧品広告に関しては「薬機法」があるように、
医療広告については厚労省によって定められている【医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(以下「医療広告ガイドライン」)】が存在します。
お恥ずかしいお話、以前に読んでもよくわからなかったので放置してしまっていました💦
有り難いことに、今回は友人が気づいてくれてすぐに取り下げることでトラブルを回避できましたが、
美容を生業として仕事をしている以上、「だめなものはだめ!」はしっかり守っていかなければなりません。
過去に情報が得られず困った挙げ句に気づかずに違反広告をしてしまった経験から、
難しい医療広告ガイドラインについて、NG表現や気をつけるべきポイントを要約してみました。
美容医療PR案件を受けることがあるインフルエンサーさんは是非ご参考ください。
2.美容インフルエンサーが医療広告に違反するとどうなるの?
法第6条の5第1項において「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とあるように、美容インフルエンサーも医療広告規制の対象者となります。
2-1.医師等又は医療機関への行政指導
違反広告は行政が見つける場合もありますが、広告を見た人が各都道府県の相談窓口に問い合わせをしたり、苦情相談をすることもあります(実際、告発事例の方が圧倒的に多いと聞きます)
広告内容を確認の上、虚偽・誇大広告等に該当すると判断された場合、まず医師等又は医療機関に行政指導が入ります。
インフルエンサーが直接指導される訳ではありませんが、仕事を依頼したクリニック側から投稿の取り下げの依頼がくるものと考えられます。
「必要な場合には、広告代理店、雑誌社、新聞社、放送局等の医師等又は医療機関以外の広告を作成した者や広告を掲載した者に対しても任意での調査や指導を行うこと。 」とあるので、場合によってはインフルエンサーが直接指導される可能性もあります。
ア 行政指導
法又は本指針に違反することが疑われる広告又は違反広告の疑いがある情報物を発見した際には、通常はまず、任意の調査として、当該広告又は情報物に記載された医業を行う医師等又は診療所若しくは病院に対して、説明を求める等により必要な調査を行うこと。
(中略)
併せて、必要な場合には、広告代理店、雑誌社、新聞社、放送局等の医師等又は医療機関以外の広告を作成した者や広告を掲載した者に対しても任意での調査や指導を行うこと
2-2.行政指導に従わない場合には罰金も
虚偽広告を行った者が行政指導に応じない場合には、6ヶ月以下の懲役又は30 万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
実際インフルエンサーさんがこのような措置を受けた事例を聞いたことはありませんが、これらの命令の対象は個人も該当するため、罰則の可能性があることだけ覚えておいてください。
エ 告発
(2) 広告違反の指導及び措置
ウ 中止命令又は是正命令(法第6条の8第2項関係)
広告違反を発見した場合には、通常はまず、行政指導により広告の中止や内容の是正を求めることとなるが、行政指導に従わない場合や違反を繰り返す等の悪質な事例の場合には、法第6条の8第2項の規定に基づき当該違反広告を行った者に対し、期限を定めて、当該広告を中止し、又はその内容を是正すべき旨を命ずること。
(前略)
なお、罰則については、①の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療科名を広告する際に、併せて許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)又は④の中止命令若しくは是正命令に従わなかった場合には、6月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金(法第 87 条第1号)、②の報告命令又は③の立入検査に対する違反の場合には、20 万円以下の罰金(法第 89 条第2号)が適用される。
- インフルエンサーも行政指導の対象となる
- 過去事例は聞いたことがないが、懲役又は罰金の罰則が課せられる可能性がある
3.「医療広告適正ガイドライン」を知っておくべき理由
・美容インフルエンサーの場合
美容医療PRのお仕事を安心して受けられるようになり、また情報を求めている方に正しい情報を届けられるようになります。
正直、現段階では医療広告ガイドラインを理解しているクリニックは少ない印象です。
「ガイドラインがわからないから言ってはいけない事を教えて下さい」と何度か聞いたことがありますが、ほぼ100%「特に有りません」と言われてしまいます(^^;)
インフルエンサーの取締事例も殆ど聞かないので、現段階では無法地帯のようになっていますが、駄目なものは駄目です!
今後、文字・画像認識に優れたAIが導入されれば違反広告の取締が厳しくなることが予測されます。
実際、化粧品業界では薬機法に対する厳しさは年々増していっています。
クリニック側もペナルティは困るので、「ガイドラインを守れる人にお願いしたい」という方向にシフトするはずです。
今のうちから、医療広告で言って良いこと・駄目なことを学んでいきましょう!
・これから美容医療を受けたい方の場合
医療広告において広告不可なことには、ちゃんと理由があります。
医療広告適正ガイドラインはの主旨は「患者等の利用者保護」。客観的で正確な情報の伝達により、患者さんが適切に治療を選択できるようにするためのものです。
広告を遵守しているクリニックさんは、リテラシーが高いことは元より情報を適切に、正確に伝えようとする姿勢を感じることができます。
そのようなクリニックは信頼性が高いと私は考えています。
治療のリアルな声を聞きたい方は、「4.美容医療広告に該当する条件」に該当しない投稿を参考にするようにしましょう😊
- 医療広告ガイドラインを知っていると、インフルエンサーもそうじゃない人も得をする!
4.美容医療広告に該当する条件
4-1.医療広告規制の対象範囲
医療広告に該当する要件は、下記の2つです。
1 広告の定義
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
媒体の具体例としてSNSは挙げられていませんが、SNSが否定される記載はなく、また化粧品ではSNSも該当広告として認識されていることから、医療広告においてもSNS投稿は広告に該当する媒体と考えられます。
①の誘引性に該当する例は下記の通り。
- 医療機関から依頼された場合
- 医療機関から金銭の謝礼を受けている、又はその約束がある場合
- 医療機関の経営に関与する者の家族等、病院の利益のためと認められる場合
4-2.医療広告に該当しない場合
個人が自ら美容クリニックで治療を受け、内容や体験談を紹介した場合は広告に該当しません。
また、新聞記事(広告ではなく、記事)で特定の病院を推奨する場合も、広告扱いにはなりません。
例えば、『X病院が~~の手術に成功!』といった見出しで治療の内容が明確に記載されていたとしても、それは広告にはならないということです。
(3) 患者等が自ら掲載する体験談、手記等
自らや家族等からの伝聞により、実際の体験に基づいて、例えば、A病院を推薦する手記を個人Xが作成し、出版物やしおり等により公表した場合や口頭で評判を広める場合には、一見すると本指針第2の1に掲げた①及び②の要件を満たすが、この場合には、個人XがA病院を推薦したにすぎず、①の「誘引性」の要件を満たさないため広告とは見なさない。
ただし、A病院からの依頼に基づく手記であったり、A病院から金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、①の「誘引性」を有するものとして扱うことが適当である。また、個人XがA病院の経営に関与する者の家族等である場合にも、病院の利益のためと認められる場合には、①の「誘引性」を有するものとして、扱うものであること。
- 金銭の授受の発生に関係なく、依頼されて投稿する場合は広告扱い
- 自発的に病院へ行った際の個人の体験談や、それを聞いた話について投稿しても広告にならない
5.よくある美容医療広告NG例!
5-1.治療等の内容又は効果に関する体験談
いきなり衝撃的なのですが、「体験談」がそもそもNGです😂
「ハイフを受けてフェイスラインがすっきりしました!」
「ヒアルロン酸を注入したら鼻が高くなりました」
「脂肪吸引をしたらウェストが-20cm、体重は5kg落ちました!」
などなど、事実であってもすべて記載不可です💦
個人個人の状態等によって当然感想は異なるため、体験談は誤認を与えるおそれがあることから広告として認められません。
例外として、SNSや個人ブログ、口コミサイトなどは、医療機関が広告料を負担していない場合には記載OKです✨
省令第1条の9第1号に規定する「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するものであるが、こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められないものであること。
これは、患者の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。
なお、個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しないこと。
- 治療の内容や効果に関する「体験談」は投稿しちゃだめ!
5-2.Before / Afterの写真
これも辛いですね💦
ビフォアフの比較はもちろん、治療前のみも治療後のみも写真掲載は不可でございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
NG写真として「いわゆるビフォーアフター写真等を意味するもの」とあることから、治療前であってもクリニック前での記念写真であればOKと解釈することができます。
とはいっても、他にも写真は使いたいですよね…!
回避方法としては、下記内容に必要なお写真であれば掲載可能なようです。
- 治療内容
- 費用(下記記載しますがキャンペーンは不可)
- 治療等の主なリスク、副作用などについての説明
「暗示的な表現」も不可であるため、イラストもNGです!
省令第1条の9第2号に規定する「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等を広告をしてはならないこと」とは、いわゆるビフォーアフター写真等を意味するものであるが、個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等については医療に関する広告としては認められないものであること。
また、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらないものであること。
以下、私の解釈ですが治療中動画はOKと認識しています。
以前に化粧品広告においてビフォアフ写真がほぼNGとされていた時に使われていた広告手法なのですが、
使用中のイラストを2枚並べることで「使用方法の説明」とし、効果の保証表現を避けるというものがあったのです。
つまり、「使用中だから、ビフォアフじゃないでしょ」という建前です。
その動画で「フェイスラインが上がってきた!」や「いい感じ!」などの”体験談”が入ってしまうと上記の理由からNGですが、途中の動画であればOKなのではないかと解釈しています。
- 術前術後は単体も比較も写真はNG!
- イラストでも駄目!
5-3.「アンチエイジング」表現
「アンチエジング」は診療科名や診療の内容として公的に認められていないため、用いることができないワードです。
化粧品はNGだけど美容医療ならOK!という訳ではないんですね(^^;)
もちろんハッシュタグもNGです!
- 「アンチエイジング」のワードは使えない
5-4.他の病院との比較や「No.1」などの最上級表現
他の病院と比較して、優良である旨は記載することはできません。
具体的に挙げられているのは、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について。
比較がNGなだけであって、単に説明するだけは問題ありません。
また、「日本一」「No.1」「最高」等の最上級表現は、客観的事実があったとしても比較表現に該当するためNGです。
また芸能人などの著名人との関係性の強調することも、他院より優れていると誤認させるためNGです。
・ 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。
・ 当院は県内一の医師数を誇ります。
・ 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。
・ 「芸能プロダクションと提携しています」
・ 「著名人も○○医師を推薦しています」
・ 著名人も当院で治療を受けております。
- 他院より優良であるような表現はNG!
5-5.「◯◯錠を処方してくれます」など医薬品名を記載
医薬品の商品名は、薬機法の広告規制からNGとされています。
「AGA 治療薬を取り扱っております。 」など、医薬品が特定されない場合には、自由診療であること、また標準的な費用を明示すれば記載可能です。
- お薬の名前の紹介はNG!
5-6.割引キャンペーン
医療広告は「品位を損ねる内容の広告」はNGとされており、その中に費用を強調した広告が含まれます。
・ 今なら○円でキャンペーン実施中!
・ 「ただいまキャンペーンを実施中」
・ 「期間限定で○○療法を 50%オフで提供しています」
・ 「○○100,000 円 50,000 円」
・ 「○○治療し放題プラン」
余談ですが、「ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告」もNGらしいです(^^;)
ドタバタ的な表現ってなんだろう笑
- キャンペーン価格は紹介不可!
6.美容医療PR案件、何が言えるの?
NGばっかりで、じゃあ何を言ったらいいのよー(´;ω;`)とお困りのあなた!私もです(泣)
上記の内容を鑑みて、投稿に使えそうな事項を並べてみました!
- 医療機関名や雰囲気、アクセス等
「新宿駅徒歩3分にあるα美容クリニックに行ってきました!とても綺麗で清潔感がありました」など - 受診した治療の内容や正規の費用、リスク、副作用等の詳細な説明
「ヒアルロン酸注射を受けてきました!」(治療の感想は言わない)
「1cc当たり◯万円とのこと。治療時は~~なリスクがあるそうです」 - 医療機関が提供している治療
- 医師の経歴や人柄
「院長の◯◯先生は~~な人です!」
などなど…
他にもたくさんあると思うので、事例があれば教えて下さい😂笑
美容インフルエンサーのお友達のmimiさんが美容医療PRがとーってもお上手なので、参考にしています!(本記事執筆に当たってもアドバイスを頂きました!)
この投稿をInstagramで見る
リアルな感想をお伝えしたい時には、PR案件と切り離して、クリニック名を伏せて別投稿でご紹介するなど、工夫して見てくださいね!
今日は、美容医療PRに関して気をつけるべきポイントを、自身の備忘録としてまとめさせて頂きました。
化粧品ほどNG事例を見てきている訳ではないので、不足やご指摘など多々あるかと存じます。
その際は、SNSのDMかお問い合わせフォームよりご連絡頂けますと幸いです。
また、本内容はNG投稿パトロールではなく、ご自身のみを守るためにご活用頂くことを願っております。
7.参照
1.「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
2.「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について 」(平成30年5月8日、厚労省)