子どものスキンケア教育の必要性とは?乳幼児期から始めるべき理由

みなさんは、お子さんに「スキンケアの大切さ」をお話したことはありますか?

スキンケアを始める年齢はさまざまですが、思春期特有の悩みである”ニキビ”をきっかけにスキンケアを始める方が多いのではないでしょうか。
私は、乳幼児の時期からスキンケアが重要だと考えています。

アトピー性皮膚炎発症リスクが高い(親または兄弟にAD患者がいる)新生児赤ちゃんを対象に行った試験では、全身に乳液状保湿剤を塗ったグループはそうでないグループと比べて、アトピー性皮膚炎の発症が約3割予防できたと報告されています。

Horimukai K, et al,. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 2014 Oct;134(4):824-830.e6. doi: 10.1016/j.jaci.2014.07.060. PMID: 25282564.

さらに、アトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚では黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) による 皮膚常在菌叢の乱れ(dysbiosis) が知られていますが、
生後早期にしっかりスキンケアをした赤ちゃん(保湿剤使用量が多い乳児)は、生後3日目時点からStreptococcus属が少ない傾向があるという報告があります。
つまり、スキンケア(保湿剤の十分な使用)が皮膚常在菌バランスを整え、AD発症を抑制する可能性が示唆されたということです。

Aoyama M, et al. Neonatal skin dysbiosis to infantile atopic dermatitis: Mitigating effects of skin care. Allergy. 2024;79(2): 267–279. doi:10.1111/all.16095

ほこりやダニ、食事など、どんなに気を付けてもアレルゲンが皮膚に触れる機会は避けられません。
近年では「アレルゲンは口から入るよりも、皮膚から侵入して感作が成立し、アレルギーを発症する」という考え方が主流になっています。

また、子どもは大人に比べてバリア機能が未熟です。近年注目されている「タイトジャンクション」も幼児期には十分に発達しておらず、成長とともに形成されていくことがわかっています

画像引用:日本化粧品技術者会 第1回学術大会(2023) 要旨集

▲タイトジャンクションを形成する細胞接着関連タンパクである「Claudin-1」が乳児では成人と比較して少ないことから、バリア機能の脆弱性が推察される。

つまり、単に“肌をきれいに保つ”だけではなく、スキンケアはアレルギーや肌トラブルを予防する重要な役割を担っているのです。

2.洗浄後の乾燥リスク|子どもへの保湿ケアの必要性

我が家では当然のようにスキンケアをしていますが、ママ友との会話では「赤ちゃんって肌が綺麗だから」と、スキンケアをしていない家庭が意外と多いことに驚かされます。
確かに、幼少期はターンオーバーが早く、きめ細やかですべすべの肌。しかしそれは“ターンオーバーの速さで補っているだけ”で、決して肌が丈夫だからではありません。

また、ベビーソープの洗浄力を測定したデータを見せてもらったことがありますが、製品によってバラつきはあるものの、半数程度の製品はシャンプーと同等に皮脂をしっかり落とす力を持っていました。

乳幼児はそもそも皮脂の分泌が少なく、バリア機能が弱い状態です。
大人ですら洗浄後にスキンケアをするのですから、子どもこそスキンケアが必要だと言えます。

3.子どものスキンケア教育を始めよう|正しい洗顔・保湿・UVケアの習慣

スキンケアを体系的に学ぶ機会は、実はほとんどありません。
私自身はアレルギー体質で乾燥がひどく、小学生の頃からスキンケアを始めました。
皮膚科の先生に「泡だけで洗う」という方法を教わり、それが乾燥肌改善につながった経験があります。

しかし、これは特殊なケース。多くの子どもは正しいスキンケアを学ぶ機会がなく、大人になるまで過ごしています。
「もっと小さい頃から紫外線の影響を知っていれば」「スキンケアの大切さを教えてもらえていれば」と思うこともしばしばです。

幸い、近年はスキンケア教育を広める取り組みが増えてきています。

① コーセー監修「かいかいせいじんとスキンケア」

2024年にスタートしたコーセーの新規事業『Dear Child Skin』。
▶ PRリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000594.000041232.html
▶ 公式サイト:https://maison.kose.co.jp/dcs/

かわいいクマのキャラクターが、スキンケアの大切さを子ども向けにわかりやすく伝えてくれます。

絵本やYouTube動画もあり、我が家でも絵本を取り入れてスキンケア教育を始めました!

また、クマちゃんが描かれた「ぬるミルク」は、超もっちり肌になる高保湿乳液。大人も子どもも一緒に楽しく学びながら取り入れられるのが魅力です。


② 日本香粧品学会「市民公開講座」

私も所属している「日本香粧品学会」では、化粧品に関する科学的知見を共有・普及する活動が行われています。

そんな香粧品学会から、『市民公開講座』として、「小学生・中学生向け」と「高校生・大学生・一般向け」に分けて、洗浄・保湿・UVケアの3テーマについて無料動画を公開してくださっています!

日本香粧品学会 市民公開講座HP▶:https://conference.wdc-jp.com/jcss/lecture/

学校の授業でも活用できるコンテンツとして、教育現場での活用も期待しています。
皮膚科学の専門家が監修した本格的な内容で、日本のスキンケア文化を支える基盤となる取り組みです!

まとめ

私は幸運にも幼少期からスキンケアをする機会に恵まれ、もっちりとした後肌感に感動したことをきっかけに、今日まで一日も欠かさずスキンケアを続けています。
そのおかげで、成長期もニキビや肌荒れに悩まされることなく過ごすことができました。

しかし当時は、子どもに日焼け止めを塗るよう指導されることはほとんどありませんでした。テニスをしていた私は母に紫外線対策として日焼け止めを勧められましたが、使用感が悪くあまり使わずにいた結果、雀卵斑(そばかす)が色濃く出てしまい、長い間悩み続けることになったのです。

今回の記事では、アトピー性皮膚炎の予防を中心にスキンケアの重要性をお伝えしましたが、子どものスキンケアは「肌をきれいに保つため」だけでなく、アトピー予防や紫外線対策、健やかな成長を支えるために欠かせない習慣だと考えています。

ぜひご家庭でもスキンケア教育を取り入れてみてください。正しい知識と習慣を身につけることが、子どもの未来の肌を守る第一歩になるはずです。

最後に、「かいかいせいじんとスキンケア」動画から心に残るフレーズを紹介します。

「あなたの命をまもるために、生まれる前に作られるのよ」
「あなたのお肌は、世界に一つだけなの。だから、毎日しっかりスキンケアをして、お肌を大切にしてあげましょうね。」

スキンケア勉強中の1歳9か月の我が子♡ 毎日、自分でぬりぬりしています。