「化粧品って、皮膚表面の角層 0.02mmまでしか効果がないんです。
皆さん、死んだ細胞である角層をひたひたにするために一生懸命お金を使っているんですよ。」
以前、とある美容関係者さんに言われたことがあります。
「だから、エステにあるような機械を使わないと、肌の奥に有効成分を届けられないのです。」
果たして、本当でしょうか?
日本では、成人女性のほぼ100%が何かしらのスキンケアを行っています。
理由は、大なり小なり、スキンケアによる効果を実感しているからに他なりません。
今日は、”化粧品の効果の実態”と、”法規制”との乖離について、考えてみたいと思います。
Index
1.化粧品成分は一部経皮吸収する場合がある。
肌最大の機能ともいえる『バリア機能』は肌の構造が健常な状態で十分に発揮されますが、
紫外線や日常的な洗顔、乾燥空気、ストレスなど、様々な刺激によってそのバランスは崩され、
肌の三大保湿因子とも言われる皮脂・NMF(天然保湿因子)・細胞間脂質などの不足によって
乾燥やニキビ、くすみ、シワ、毛穴の開きなどなど….
様々な肌トラブルに繋がってしまいます。
乾燥性小ジワや炎症などのお肌のトラブルの殆どは、
お肌の表面から0.02mmの厚みしかない、”角質層”というところで起こっていますが、
シミや色素沈着性のクマ等は、0.2mm程度の厚みを持つ”表皮”全体のトラブルですし、
深いシワ、糖化による黄ぐすみや色素沈着してしまったシミ等の一部は、
表皮さらに奥の、”真皮”という部分(1.8mm程)で発生するトラブルです。
大塚製薬さんのページ、皮膚の仕組みについて非常にわかりやすく説明されているので、
是非ご参考になってください(^0^)
様々なお肌悩みを解決すべく、
基い、予防するためにスキンケアをする訳ですが、
お化粧品によるスキンケア効果は『角質層まで』とされています。
「されている」と強調したのは、お化粧品は嗜好品だからです。
薬ではないので、人体に作用があってはならない・・・
誰でも安全に使用できることが、大前提です。
角層中の角質細胞はよく『死んだ細胞』とよく表現されます。
核を持たず、積み重ねられた角質細胞は、
役目を終えて剥がれ落ちるまで、基本的に姿を変えることはありません。
「死んだ細胞には、塗ったり剥がしたりしてもOK!」
これが、お化粧品の基本的な考え方です。
ですから、「ぐんぐん浸透!」といった浸透表現の広告表記にも、
必ず注釈で「角層まで」と書いてあるはずです。
実際は、少し異なります。
美白化粧品は良い例です。
医薬部外品有効成分承認取得をしているということは、
規定の使用量によって、効果の有用性が承認されている化粧品です。
つまり、美白メカニズムに大きく関わるメラノサイトやチロシナーゼは
表皮最下層である基底層に存在しているため、
少なくとも表皮奥にまで成分が浸透していないと、辻褄が合わないのです。
同様に、日本で初めてシワ改善効果の承認を取ったPOLA リンクルショット メディカルセラムは、
真皮の浸透を謳っていました。
体感としてわかりやすい例でいうと、
誰もが感じたことのあるメントールのスースー感は
角質の奥にある表皮中のランゲルハンス細胞が感知していると言われています。
”経皮吸収”と言ったとき、どの範囲までを指しているのかは人によって違うようですが、
少なくとも化粧品の一部が角層下まで浸透している可能性は十分にある、と言えそうです。
2.角層に浸透するには?
とはいえ、繰り返しになりますが角層のメイン機能はバリア機能です。
全ての成分を、スイスイ吸収する訳ではありません。
2-1.分子量が大きい成分は例外なく通過しない
特に、角層を通過するために絶対的に必要だと言われている条件は分子量です。
分子量 ≒ 分子の大きさと言うこともできます。
健常肌の方の角層を通過するためには、分子量600程度以下であることが必要です。
皮膚が荒れている状態だとより大きな分子量も通過させてしまうため、炎症を起こしかねません。
アトピーの方はバリア機能が低下しているため900程度まで入ってしまうこともあります。
分子量が大きいと単純に隙間を通りづらい上に、拡散しにくいために浸透率が下がると考えられます。
2-2.分子の性質と皮膚の相性
分子量が小さくても、浸透しない代表的な成分もあります。
意外ですが、水です。
分子量18と非常に小さいですが、何故入らないのでしょう…?
皮膚は、角層 - 表皮 - 真皮 - 皮下組織 それぞれに油っぽかったり、水っぽかったりする性質があります。
順番に、油っぽいー水っぽいー水っぽいー油っぽい という性質があり、
このミルフィーユのような構造がバリア機能を高めています。
水は油となじみにくいので、単純に角層を通過しにくいのです。
逆に、分子量は少し大きくても、分子量300程度の脂肪酸は水よりも浸透しやすい性質があります。
角層中に含まれる水分の殆どは経口摂取したもので、化粧水などによる補給はほぼ一部です。
3.浸透性を高める工夫
この入りづらい水分を頑張って入れようとする方法の一つが、シートパック。
先ほど、「肌が荒れると浸透しやすい」と書きましたが、
シートパックで角層をふやけさせると、一時的にバリア機能が低下して浸透性が高まります。
また、密閉状態を作りますので、普通に塗ったら空気中に蒸発してしまうものも、皮膚中へ拡散するという現象が起きるのです。
また、同様に湯船に浸かっても角質は一時的にふやけるので、角層中の水分が逃げやすい状態になります。
どちらにしても、時間が経てば元の状態に戻りますのでご心配いりませんが、
頻繁に繰り返してしまうと乾燥状態を招いてしまうかもしれません。
シートパックをしたら、”蓋”の役割をしてくれる乳液・クリームやオイルなどのケアをお忘れなく^^
湯船に浸かるのは、一日に一度程度がいいじゃないかと思います。
また、界面活性剤やアルコールなどの、水と油の両方の性質を持つ成分を混ぜたり、
水っぽい成分に油っぽい成分をくっつけて、浸透性を高める工夫などもされています。
ビタミンC誘導体は代表的で、
化粧水に処方したい時には水溶性の置換基(部品)を、
乳液やクリームに処方したい時には油溶性の置換基(部品)をくっつけて使い分けますが、
”肌のどの部分に効かせたいか”で使い分けることもできるのです。
よく聞くリポソームやマイクロカプセルのような処方については、
リポソームがごろっと浸透することは難しいんじゃかいなと思います(^^;
リポソームの部品の一つであるリン脂質は、それだけで分子量が300程度はあるので…
肌中で酵素による分解を受けて、ほどけながら徐々に浸透していくなどのメカニズムは十分考えられますね!
4.浸透するのはいいこと?悪いこと?
「お化粧品が浸透する」ことについて、皆さんはどのようなイメージをお持ちですか?
「良いものは浸透させたい!」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、
私はそうは思いません。
私が勉強した限りでは、皮膚は解毒機能を持たないので、
浸透した物質を『異物』と察知すれば炎症になってしまいます。
そもそも肌のバリア機能がしっかりしていれば
内側からの水分は逃げづらく潤いを保てる上に、菌やウィルス、紫外線、大気汚染などなどの外界刺激に対する対抗性も高まるからです。
それを成し遂げるのが、角層という超発達した人間の素晴らしい器官なのです。
以前、角層について熱く語った記事はこちら(笑)
なので、私の意見としては、
「浸透してるかしてないかは判断しづらいんだから、
肌本来の機能であるバリア機能生かすケアが、間違いないんじゃないかな(^^)」と考えています(^^)♪
ところで、
化粧品は、嗜好品です。
安全性が第一優先のため、基本的に経皮吸収されたとしても害のない物、あるいは害のない量(閾値以下)で処方されています。
岡部美代治さんの経皮吸収セミナーを受けた際仰っていたのは、
「猫パンチは痛くないけど、アントニオ猪木のパンチは痛いでしょ?」(笑)
なんともお茶目な例えですが、とーってもわかりやすいなぁーと思いました。
ここにきて、やっとトップ画像の登場です笑
刺激に対して、肌がポジティブに反応すれば有効成分。ネガティブに反応すれば刺激物。
化粧品はポジティブな猫パンチが基本ですが(笑)、
肌状態や精神状態によっては、ネガティブな猪木パンチになってしまう可能性もあります。
化粧品の場合、ピリピリしたり赤みが出たら、すぐに使用を辞めれば大きなトラブルになることは稀。
どんな物質だって、100%安全といものはあり得ないのだから、ご自身のNGサインを見逃さないことが大切です。
今回のお話、実は年末に受けた岡部美代治さんのビューティサイエンスセミナーでご教授頂いたことを元に書いています。
大変面白い内容だったため、どう伝えようか悩んで悩んで悩んで、こんな時期になってしまいました(笑)
一緒にセミナーを受けたのは
MAQUIA blogger友達で、化学専攻リケジョ仲間でもあるごんちゃんと、
コスメコンシェルジュであり、未来の化粧品業界を担う若者 学生さんの瀧本さんという
理系メンバーを招集してみました♪
質問も遠慮なくできるし、
他の皆さんの質問もとっても参考になって楽しいセミナーとなりましたよ^0^
個人的な事情でブログ更新も久々になってしまっていますが…
この理由を早く言いたい!でも言えない!(>_<)笑
いつかお知らせできることを夢に頑張っております!
意味深ですが、今日はここらで(^^)♪