皆さんは、どのように化粧品を選んでいますか?
或いは、化粧品を選ぶ時には何を見るべきなのでしょうか?
使い心地、成分、コンセプト、ブランド…..
全て正解ですが、今日は“自分基準を作ること”のススメと、その有用性についてお伝えしようと思います。
毎月参加しているビューティサイエンティスト 岡部美代治さんのビューティサイエンスセミナー。
今月のテーマは『化粧品評価の科学』
この題目はこれまでの魅力的なセミナーを差し置いて、最も興味のあるものでした。
”美容の本質”はなんだろう?と考えた時、何をもって保湿というのか?美白とは何の数値で判断するのか?良い化粧品は何を目標に作られているのか?とっても疑問だったからです!
ものづくり出身なだけに、つい”数値化・見える化”したいと思ってしまう性でして…機器測定については、これまでも特に興味を持って勉強していました✎
今回のセミナーで特に学んだのは、官能評価について。
岡部さんの研究時代・商品開発時代のご経験と、コンサルでの商品開発経験を活かした評価方法のまとめは見事でした!
商品開発の視点が非常に色濃い内容でしたので、今回はセミナーを受けて私なりに考えたユーザーとしての化粧品の選び方を提案させて頂きたいと思います!
「どのような評価で化粧品が作られているか?」がわかると、「どのように化粧品を選べばいいか?」のヒントにもなりますよ^^
Index
1.機能評価と官能評価
『評価』と一口に言っても、その手法や目的は様々。
一人でするのか、数人のチームでやるのかによっても結果は変わりますし、
市場調査なのか、商品開発目的なのかによっても評価項目や手法は変わります。
特に、化粧品において大きく分けられるのは機能評価と官能評価です。
1-1.機能評価
機能評価とは、保湿、皮膚色、皮膚力学測定、皮表pH、経皮水分蒸散量(TEWL)、キメ・シワなどなど、、、
挙げたらキリがないですが化粧品の効用を評価することです。
ところが、日本では抗シワ、美白、SPF、PAに関する評価法は基準化されているものの、多くの効能の評価はメーカー独自の手法で評価しており、概ね類似した手法となっています。
一方、EUではEEMCOガイダンスという皮膚計測法があり、これに則って評価をしているようです。
化粧品の効果は即効性もあれば経時で効くものもあり、また単一成分の効果もあれば複数成分で作用するものもあり、非常に複雑です。ですから、”測定方法を決めること”が大切です。
例えば、保湿効果を評価する場合、「肌の水分保持力」と定義するとTEWLは測れても肌の中にどれ程水分があるか?を直接測ることは困難です。そこで、角層の含水分量を電気特性で測定することによって置き換えます。
実際、角層水分量が増加するとTEWLは低下し、肌のキメ状態がよくなることが多いです。
このように、機能評価は科学的整合性と客観性が高く、数値で表現可能な点が特徴です。
1-2.官能評価
化粧品の大事な側面として無視できないのは感触の嗜好性・快適性です。
化粧品が機能を発揮するためには一定期間継続使用する必要があり、そのためにも使い続けたくなる商品である必要があるためです。
また、結局ユーザーは化粧品を好き・嫌いで選ぶ傾向が強いため、人の感覚や好みを評価する官能評価が非常に重要になってきます。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった人の五感に頼って測定する手法のため、科学的整合性が説明し難く、主観的要素が高い点が特徴です。
2.化粧品の選び方のススメ
実際、ユーザー視点で化粧品を選ぶときは機能評価はできませんから、その他の情報から判断することになります。
例えば、
- メーカーからの発信
- 美容部員さんやアドバイザーからの情報
- メディア情報
- 口コミ
- サンプルやタッチアップ
- 配合成分
などです。
特に、化粧品についてよく勉強している方は肌悩みの真因と対応する化粧品成分の検討がつきます。目利きした化粧品を使って理想の肌へ導くことが出来るでしょう。
2-1.気持ちよく使用し続ける化粧品の効果
化粧品の効果を引き出すには、やはり気持ちよく使用する事が大切です。
化粧品を機械的に塗布した時と心を込めて塗布した時では脳の反応部位が異なっており、脳活動パターンの違いが心身や皮膚状態と密接に関連することがわかっています。
図.fMRI画像 水色部分:使い始めたばかりの化粧品に対する脳活動例
※参考:資生堂 脳科学研究「脳への働きかけ」
なんでも、6週間使用して気に入っている化粧品に対して、初期の恋愛関係と共通した報酬系と呼ばれる人の快情動に関わる領域や、さまざまな感情機能にも関わる内受容系の領域の脳活動が認められ、親密な対人関係を作り上げていく段階と類似していることが分かったそうです。
また、何度もリピート購入して使用している化粧品に対しては、報酬系の脳活動に加えて、幸せホルモンとしても有名なセロトニンやオキシトシンなどの分泌に関わる脳幹の内分泌系の領域において長期的で安定した愛情関係と共通する脳活動が確認されたそうです。
つまり、気に入って長く使っている化粧品はそれだけで肌を美しくしてくれるのです。
そういう訳で、化粧品の官能評価はセルフにおいても重要項目と言えそうです。
2-2.官能評価は難しい!
ところで、官能評価の難しい点はとにかくバラつきが大きい点です。
正確に測定しようと思ったら、決まった洗顔料で肌を洗った後、恒温恒湿度環境下に一定時間静止して、肌の条件を揃えるなどしなければいけませんが、セルフでするのは実質不可能です。
私も以前厳密なモニター試験に参加した時は、恒温室20±2℃ 湿度50±5%の部屋に20分静止したことがありますが、超絶暇です。
ブルーライトなどの刺激も良くないのかスマホも見れないですし、もちろん寝てはいけません。アメリカでは試験を受けるだけでも良いアルバイトになるみたいです。
化粧品評価をする前日はコーヒーやカレーなどの香りの強い物・刺激物も避けなければいけません。
そうやって気を遣っても、日や体調によっても感じ方は異なるそうです。
また外観や他者の会話による先入観や、時間のゆとりなども評価結果に影響します。
できるだけ条件は揃える努力はすべきですが、完璧に条件を揃えるのは難しそうです。
2-3.化粧品をテクスチャーで選ぶコツ①「相対評価」
官能評価が難しいことはよくわかりましたが、その上で心地よく化粧品を使い続けるコツは何でしょうか?
私がオススメしたいのは、基準の化粧品と比較する相対評価です。
相対評価では、参考品を決めてその商品との差異を目安に評価します。
項目は「保湿感」「肌馴染み」「後肌感」「ツヤ」など、予め書き出して決めておくのがいいでしょう。
記録を重ねると、なんでその化粧品が好きなのか?どのような化粧品を好む傾向にあるのか?がわかるようになります。
多くの項目があるとわかりやすいですが、評価をしているとわからなくなるので出来るだけ多くの項目を挙げた後に需要項目を6点ほど自分で決めるのがオススメです。
実際、商品開発の際に作成する商品設計書にも、6項目程の重要項目を決め、ベンチマーク品を目標に品質評価を行うそうです。
化粧品レビューなどを書くブロガーさんやインフルエンサーさんには是非実践して欲しい評価方法です!
「相対評価」の対義語は「絶対評価」です。
これは、特定の基準品がなく評価者の基準で評価する手法です。
前述した通り、評価は環境や体調などによって大きく異なりますが、訓練をすれば一定の評価ができるようになるそうです。
それを確かめるためには、毎日同じ製品を評価して、どのようにバラつくのかを観察してみるのがいいでしょう。
2-4.化粧品をテクスチャーで選ぶコツ②「評価部位」
化粧品を評価する際、身体のどの部位で評価をするかは大変重要です。
よく、化粧品のテクスチャーを見るのに手の甲に大きく塗り広げる方を見かけますが、手の甲は小さく3種類以上比べづらい上に、狭い面積の割には部位によって感じ方が大きく異なるのでオススメしません。
評価を専門にする方は前腕内側部を使用する方が多いと思います。
※決まっている訳ではないです!
3.化粧品評価ワークショップ
ビューティサイエンスセミナーでは、参加者9名で化粧品評価ワークショップを行いました。
基準品Aは尾瀬の水です。含有成分23.4mg/L程度の超軟水だそうです。
評価項目は「しっとり感」。他 化粧水S,Dを評価します。
このような評価表を作り….
評価した結果がこちらです!
なんとなく曲線をつけてみると、傾向が見えてきます。(手書き)
実は、
- Dはある白濁化粧水を50%ミネラルウォーターで希釈したもの。
- Sは白濁化粧水そのまま
単純に考えれば、しっとり感は S > D > A となるのが正解です。
実際、かなりバラついた結果となりました。実際の触り心地も非常に絶妙で、
「後半の方がしっとりの気がするけど、そう思いたいだけじゃないか?いやいや…」など、一人で心理戦をしてしまっていました笑
わかっていてても難しいですね((+_+))化粧品評価は難しい!
でも、10人程度集まればある程度傾向が見えてくることもわかりました。
そもそも、一人の好みが一般の方の好みとは限りません。
自分がレビューをしたり、個人のレビューを見る際には十分にその点に留意する必要があります。
また、数人で評価するなどの工夫で信頼性を高めたレビューを集めても面白いかもしれません!
4.最後に
化粧品の魅力を最大限に引き出す選び方は、悩みに対して成分的に妥当性のある化粧品の中から、五感を刺激して気に入って使い続けられるものを見つけ出すこと。
そのために、基準品を作って比較する手法を紹介させて頂きました。
化粧品そのものの差異を目利きできるだけでなく、自分観察にも有効な方法と言えそうです。
しかし、「それらの評価は全て化粧品の価値の一部しか表してないことを忘れてはいけません。」
この言葉は、セミナーを受講して最も印象に残った岡部さんの言葉です。
一個人の見解は、一個人の評価であると同時に、複数人の評価が一人の嗜好性と一致する訳ではないのです。
そこが化粧品の難しくも魅力的な点。
結局、嗜好品である化粧品は使う人の気持ちを高揚させ、その人の魅力を増した時に価値を発揮するのではないでしょうか。