私が化粧品について、今ほど理解をしていない頃、
それでも化粧品広告等でよくあるワードに抵抗感を覚えていました。
それは、
「合成界面活性剤不使用」
「合成ポリマー不使用」
などといった、”合成◯◯”系のフレーズ。
「何が悪いの?」と思っていました。
私は有機合成の研究をしていたので、
化学合成された物質がいかにきれい(ピュア)にできるかを、知っていたからです。
今日は少し難しい話になりますが、
できるだけわかりやすく、「合成◯◯」の誤解を解いていきたいと思います。
化粧品成分の効果というのは、分子構造に由来します。
これは、私たちの身近なもの、全てそうです。
二酸化炭素は水に溶けにくいとか、水と油は混ざりにくいとか・・・
聞いたことありますよね^^
化粧品で言うと、お酒にも入っているエタノールは
こんな小さいので軽いですが、
セチルアルコールは
こんな構造なので、重いです。
エタノールみたいに勝手に揮発してなくなりません。
同様に、美白成分として有名なハイドロキノンは、
もう少し効果の穏やかな美白成分 アルブチンと似た構造をしています。
ちなみに、アルブチンはコケモモエキスに含まれていて、
研究者はもちろん、
「アルブチンを塗ってみたら白くなった!」ではなく、
「アルブチンはハイドロキノン様の構造だから、美白効果が期待される」という考え方をします。
効果を発揮しそうな構造の分子を探す訳ですね^^
さて、超有用な美肌成分として、
こんな成分が欲しいとします(笑)。
絵心がなくってごめんなさい 💦
合成の場合
↑いつかの研究室w
単純に、これと これを混ぜればできそうですね。
ところが、合成に副生成物はつきものです。
フラスコに入れて溶媒と共に混ぜた結果、
こんなのができたりします。
あれ、なんか↑が違うものがありますね💦間違い探しです(笑)
構造が似ているものは似た性質を示すので、
コレとコレは分けにくかったりします。
なので、合成をする時は、
材料を入れる順番、速度、濃度、時間、温度、試薬などなど・・・
たくさんのことを考えて反応を制御し、
分けにくい副生成物ができないような反応経路を確立します。
一方、天然由来から目的物であるを取り出そうとした場合。
生物は生き残りのために長い年月をかけて進化してきた、
複雑な分子の塊です。(世の中の物質は全て分子or原子)
非常に様々な成分が入っていますし、
育った環境や収穫時期が違えば、同じ植物でも成分比率が変わってきたりします。
全てを把握するのは、不可能です。
しかも、自然淘汰の末に生き残った生物が作り出した分子構造の中には、とっても複雑なものも珍しくありません。
パクリタキセル
ある植物からコレを取り出そうとするととき、
成分が溶けそうな溶媒に入れたり(主にはエタノール)、圧搾して取り出したりします。
このとき一緒に溶け出してしまった成分に毒性がなかったり、
低リスクである場合には、目的成分が単離できなくても使用されます。
この場合、化学合成由来と植物由来、どちらがピュアだと思いますか?
加えて、
植物由来から目的物を単離できたとして、精製技術が難しければ高価となりますし、
合成物だろうと、植物由来だろうと、コレはコレ。
効果効能は同じです。
実際、サメ由来のスクワランも、オリーブ由来のスクワランも、サトウキビ由来のスクワランも、全て
同じ性質を示します。
だから、私は「合成◯◯不使用」という言葉を好ましく思っていません。
何しろ、日本人が大好きな『薬』は化学合成された有効成分が多用されていますが、
医師の処方の元、口に入れることさえしています。
UVケア化粧品において”ノンケミ ”といってもてはやされる酸化チタンや酸化亜鉛だって、
立派に化学的に合成された原料です。
山や谷から採れません。
一方で、合成よりも植物由来の方が量産が簡単な場合もあります。
肌へ影響するのは成分そのものであって、何由来かではありません。
化粧品は何よりも安全性が重要視されることが基本ですから。
ところが、ストレスや体調のせいで肌が敏感になっていたり、
アトピー体質でバリア機能が弱かったりすると、
刺激を感じる成分があることも事実です。
エタノール過敏症の方はとても多いと思いますし、
確かに継続使用をオススメしない成分だってあります。
大切なことは、材料の由来ではなく
「自分の肌に合うか」ということ。
”合成◯◯”を避けて使える化粧品を狭めずに、
お好みの使用感、使用方法、使用効果の化粧品を選んでみてくださいね🎵