ピテラの効果&発酵エキスの力とは?【発酵】の正しい知識

コメ発酵エキス
大豆発酵エキス
ビール……笑

私たちは、【発酵】というワードにとても良いイメージを持ちがちです。

では、実際化粧品における”発酵”の優位性は何でしょうか??

 

最近、ディープな情報が多めな本blogですが、
今日は、岡部美代治さん主催 ビューティーサイエンスセミナー 今月のテーマ
【発酵技術と化粧品】について、お伝えします!

 

皆さんは、”発酵”と聞くと何を思い出しますか?

納豆、ヨーグルト、キムチ、日本酒….

お酒に引っ張られがちなのは置いておいて(笑)、
化粧品よりも食品のことを思い浮かべる方の方が多いのではないでしょうか?

それもそのはず。日本は高温多湿な気候から、発酵食品大国とも言えるほど
市場にはたくさんの発酵食品で溢れています。

海外の食品でいうと、
中国のメンマ、タイのナンプラー、ヨーロッパのピクルスアンチョビ、、、
世界一臭い缶詰と称されるシュールストレミングなんかもありますね。

シュールストレミング

http://hothitoiki.com/surstrommingより引用

そして、私たちが大好きな(?)お酒も、
微生物の力を借りて作り出された、立派な発酵物なのです。

 

こんなに身近な発酵物ですが、
「〇〇発酵液配合化粧品」というと、正直「???」がいっぱいでした(^^;)

例えば、発酵化粧品で超有名なSK-Ⅱの製品HPでは、

厳しい管理下で行なう自然発酵プロセスから生成されるピテラ™は、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、有機酸が豊富に含まれた無色透明の液体。

肌には、自然の保湿成分(NMF)があります。NMFは、肌の透明感、柔らかさ、そして滑らかさの向上を決定づける要素。SK-II独自の成分であるピテラ™は、このNMFと同じ成分を含むことが分かっています。
SK-Ⅱ HPより引用

とあります。
魅力的なキーワードは”ビタミン類”、”アミノ酸”、”有機酸類”、そして”絶妙なバランス”(笑)

ミネラルを除いた理由は、化粧品にはミネラル(金属)と結合して沈殿を生成してしまうことがあり、
基本的には”金属封鎖剤(キレート剤)”という成分(EDTA-2Naなど)が入っていることが多いためです。
(もちろんSK-Ⅱ製品にも入っています!)
ミネラルは肌から摂取できませんしね(^^;)

正直、「ビタミン類である程度抗酸化作用があり、アミノ酸が保湿剤として働くのかなぁ」くらいのイメージで、
「高い発酵化粧品じゃなくてもいいかな^^;」なんて思っていたりも笑

 

では、発酵液の魅力に迫る前に、「”発酵”とは」から復習したいと思います!

1.「発酵」の定義

大前提として、私たちが”発酵”と呼んでいるものは、学術的には”発酵ではない”可能性があります。
どういうことかというと、
『発酵とは生物が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に代謝してエネルギーを得る過程』
のことを指します。
難しい言葉ですが、「嫌気的に」とは「酸素を使わない」ということ。

一方、一般的な解釈では
・微生物が人にとって良い物を作ったら発酵(ヨーグルトなど)
・微生物が人にとって悪い物を作ったら腐敗(日の経った牛乳など)
となっています。
酸素を使おうと使わなかろうと、”好気的発酵””嫌気的発酵”と呼べば”発酵”です(^0^;)
反応の系が全然異なるのですが、人間はなんとも都合のいい解釈をするものですね(^^;)笑

学術的にも一般的にも、発酵の例で有名なのはワインです^^
ワインの皮には”イースト”という酵母が住みついていて、皮ごと潰したぶどうジュースを濾過し、
割れない瓶につめ、空気を抜いて”嫌気性条件”を作ると、酵母が働きだして、いつか美味しいワインを作ってくれます^^

イメージがついたところで、発酵について、もう少し詳しくみていきましょう!

 

2.「発酵」≒ 微生物の生命活動

第一に、”発酵”とは”微生物の生命活動の一環”です!
人間のために何かを生み出している訳ではなく(笑)、彼らはただ生命活動を営んでいるだけなのです。

ですから、発酵に必ず必要なのは「原料」「微生物」そのものになります。
微生物原料を食べた結果、生命活動に必要な物質老廃物を生み出します。

実は、微生物にとって発酵で生み出すアルコールは、老廃物に当たります!
だから、アルコールが約14%以上になると、菌自体も死んでしまうそうですよ…!!😨
”アルコール消毒”があるくらいですからね、、、まさに、発酵は命がけです(笑)

その他にも、「自身を保護する成分」として生み出すのが抗菌ペプチド
※抗菌ペプチドについて詳しく知りたい方、こちらが面白いです!

また、「生育環境を整える成分」としてブドウ糖アミノ酸などを分泌し、必要な時に自身のエネルギーとして利用したり、
ビタミン類酵素などの「生命活動に必要な成分」も合成しているのだそうです。

さて、これら一連の過程は、出発点である原料と微生物が変われば代謝物も変わってきます

化粧品に関係あるところでいえば、
米麹を原料にアミノ酸コウジ酸を生成し、
乳酸菌牛乳を原料に乳酸有機酸類を生成し、
ナタ菌ヤシを原料にナタデココ(多糖類)を生成します。

コウジ酸美白系の有効成分として有名ですよね^^
また、ベタつかずに被膜感のある保湿剤として優秀なナタデココは、発酵技術の賜物です!

ちなみに、超有名保湿成分であるヒアルロン酸(多糖類)
かつては鶏のトサカから抽出されていたというのは有名なお話ですが、
現在は動物由来も残っているものの、バイオテクノロジーを利用して生成されています。
要は、発酵技術です。

特に、欧州動物由来の原料がNG
資生堂さんは、動物を使わずに乳酸菌の一種「Streptococcus zooepidemmicus」という生産菌を利用していることをアピールポイントとしています。

 

3.化粧品における発酵技術の魅力は”ペプチド”

さて、化粧品の一部に発酵技術が使われていることはわかりましたが、
とはいえ何が魅力的なのでしょうか(^^;)

魅力の一つは、先ほど発酵の分泌物としてさらっと書いたペプチドです。
ペプチドはアミノ酸がいくつか繋がった成分
ペプチドがいくつか繋がるとタンパク質になります。
つまり、発酵の原料タンパク質が含まれると、ペプチドが生成される可能性が高く、
そのペプチドは化粧品では機能性成分として着目されています。

エイジング化粧品の全成分表示を見ると、
「ヒトオリゴペプチド-1」「オクタペプチド-2」「カプロオイルテトラペプチド-3」「オリゴペプチド-20」などなどなどなど….
「〇〇ペプチド-(数字)」といった標記の成分があることが多いです。
多種ペプチドの機能性に着目し、配合されているのですね(^ω^)

いま、手元にあるエイジングケア化粧品は”ビジュー ドゥ メール リジューブフェイス Rパック”
及川尚輔氏プロデュースコスメは、良いか悪いかは置いておいて
とにかくペプチドの種類が多いので、参考にしてみました(笑)

 

『原料』×『微生物』×『製造方法』の組み合わせで何が生まれるかわからない発酵の世界…

次は、具体的に発酵化粧品を見ながら、その魅力を探ってみましょう^0^

 

4.発酵技術応用例:勇心酒造

今回セミナーにて挙げられた内容で特に特に気になったのは、
勇心酒造さんのライスパワーエキスです。

美容好きの方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

正直、”エキス類”はぱっと見で判断することがとっても難しいので私はあまり着目していません(^^;)
配合濃度も一般的には1%以下であるため、有効濃度入っているかどうか判断しづらいためです。
※全成分表示は1%以下順不同

ライスパワーエキスの驚くべき点は、
エキスでありながら医薬部外品のの有効成分として承認を得ているということです。
特に、ライスパワーNo.11皮膚水分保持能の改善効果を、
   ライスパワーNo.6 皮脂分泌の抑制効果
   ライスパワー1-Dは、入浴剤としての使用にて温浴効果が承認されています。

勇心酒造さんのHPを参照すると、『ライスパワーNo.103』まであるので、
おそらくミニマムで103種類は作ったのでしょうね….(^^;
企業努力がすごいです!

先ほども申し上げました通り、発酵は原料と微生物が違えば異なるものができます
ですから、米の種類・菌の種類を変えて、或いは精製方法も変えて多種多量にエキスを作り、
スクリーニングしていったんじゃないかと思います。

”スクリーニング”とは『やたらめったら試験してみて、めぼしい成分を見つける』操作です。

医薬品の開発ではよう行われる手法ですが、
化粧品での開発の苦労を想像すると、涙が出ますね(;;)

また、エキスは単一性分ではなく、初めから複数成分の混合物ですから、
肌への効果が認められたとしても「何の成分の効果か?」がすぐにはわからないはずです(^^;)

「アミノ酸類が肌の保湿能を整え、ビタミン類が過剰な活性酸素を除去し、肌の細胞が活動しやすい環境を整えた」かもしれませんし、
「機能性ペプチドによって、本当に成分由来の効果が出た」のかもしれません。

正確な成分分析はできていないとのことですので、まだまだわからないことが多いですが、
エキスで医薬部外品申請を取得できたのは、驚きです!

 

このように、発酵エキス系は開発過程に時間がかかるためか、必ずブランドストーリーがついているそうです(笑)

確かに、何故かたまたま訪れた日本酒醸造所で杜氏の手がきれいなことに気付いたり、
発酵に魅了されて四苦八苦した後、奥様の妊娠と共に製品が完成したり、

そしてそのストーリー性がまた、発酵エキスの魅力を増していることは間違いありません。

「発酵」「食品」が結びつき、「長年かけて開発」といった「安心感」発酵エキスの魅力の一つなのかもしれません。

 

5.発酵化粧品のデメリット

5-1.臭い

さて、これまでとてもいいイメージが続いている発酵エキスですが、懸念点がいくつかあるとも思います。

一つは”臭い”
要は微生物にとって老廃物まで丸ごと使っている訳ですから、
配合濃度が高いほど、効果と共に臭気も強くなってしまいそうです(^^;

5-2.品質のバラつき

もう一つは、品質のバラつき。
なんたって発酵は微生物の活動ですので、気温や湿度で微生物活性が変化すると品質もバラつきます。
※そこをITやデータを活用して品質を一定に製造している獺祭はすごいです!
もちろん、性能検査はしていると思いますが、単一物質のようにはいかない、ということです。

5-3.ビジネスライクに利用される

最後の一つは、「美容分野で、発酵についてちゃんと語れる人がいない」印象があることです。
正直、今回の講義を受けるまで発酵はとっても未知の分野でした(^^;)
というのは、「発酵」「化粧品」と調べると、
「自然由来で石油由来じゃないから肌に優しい」とか ←由来は関係無し!成分そのものが大切✨
「皮膚常在菌が増える」とか(!)
「べたつかない」とか ←生成する多糖類の種類による
「敏感肌でも使える」とか ←含有成分と濃度による
ん?!!!という情報ばかりなのです(^^;)

メーカーのHPを見ても、「長年かけて開発した」とか「自然の力を借りて」とか、
その中の何がいいの?どの成分が特徴的なの?といったことが見えてこないんですよね。。。

ライスパワーの例でもある通り、まだまだ発酵エキスについては結果論で語っている印象があるのです。

お肌がきれいになるのであれば、そのこと自体はなんら問題はないのですが、
正しくわかりやすい情報が出回っていないということは、ビジネスライクに利用されがちです。

酵素ドリンクがまさにその例で、「よくわからないけどなんだかよさそうなもの」だから高額で製品化されて、なんだかとっても売れていますよね(^^;)

ブログやtwitterで何回か申し上げていますが、
酵素を飲んでも体内酵素としては働きません。

6.発酵・酵母・酵素の違い

折角なので、講義でまとめて頂いた発酵・酵母・酵素の違いについて整理したいと思います^^
発酵は、微生物が嫌気的に代謝してエネルギーを得る“過程”
酵母は、多くの発酵に使われる、単細胞からなる“真菌類”
酵素は、生体内で起こる化学反応の“触媒”として機能する分子であり、“タンパク質”

発酵がいいとか、酵母がいいとか、酵素が良いとかではなく、
それぞれの言葉を理解して、結果的に生み出された生成物が何か?がとても大切です。

もちろん、化粧品成分に毒物は使われませんが、
発酵の末に毒物ができあがることだって、あります。
皆さんが”腐敗物”と呼んで嫌っているものも、発酵の賜物なのです。

 

岡部さん曰く、「発酵は生物学的錬金術」
未知の組み合わせにより新しい成分が作られ得るということです。

それは肌にいいものかもしれないし、よくないものもあるかもしれません。

同時に、成分の組み合わせによって、これまでの基材では存在しなかったハイブリッド式の効果を発揮するのかもしれません。

 

ちなみに、主題の『ピテラと納豆の違い』は、『原料と微生物の違いによる生成物の違い』
当然と言えば当然ですが、どちらも『発酵物』という点においては同じのです。

精製方法も違うので、比較対象にするのも変かもしれませんが、
言いたいことは、原料と微生物の組み合わせによって、多様な生成物が生まれ得るということです!

なんだか、不思議^^

発酵化粧品について冷静に見る目を持ちつつ、微生物さんの今後の可能性に期待して、今日は終わりたいと思います☆

 

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イメージがよくビジネスに利用されがち。

うまく付き合わないといけない。

主題の答え。原料も菌も違うから、まったくの別物。

この二つの組み合わせで無限な可能性が広がることをご理解頂けますと幸甚です。