「肌休め」
「帰ったらすぐにクレンジング!」
「ファンデーションは肌に負担」
などなど、
ファンデーションに対して、悪いイメージを持っている方は少なくないのではないでしょうか?
実は、ファンデーションで肌荒れする要因は、クレンジングが合っていないから。
ファンデーション自体によって肌荒れが引き起こされることは一部の例を除いてありません。
肌荒れしないファンデーション探しではなく、自分の肌に合ったクレンジングと、そのクレンジングで落とせるファンデーション選びをするのが正解です。
その理由について、ファンデーションの成分から紐解いていきます。
自分が思っているより、様々なファンデーションを選べるようになるかもしれませんよ!
1.「バリア機能の低下」「刺激物の接触」は肌荒れを引き起こす
ひとくちに”肌荒れ”といっても、乾燥、赤味、ニキビなどその症状は様々。
その大きな要因として、「バリア機能の低下」と「接触物の接触」が挙げられます。
「ファンデーションで肌荒れするか?」の問いは、「ファンデーションでバリア機能が低下するか?」「刺激となる成分が入っているか?」と言い換えることが出来そうです。
果たして、ファンデーションで肌荒れする要因はどこにあるのでしょうか?
2.ファンデーション自体では肌荒れしない訳
2-1.化粧品成分の基本組成
全ての化粧品は水と水溶性成分、油と油溶性成分、およびそれらを混合し安定化するための界面活性剤が基本組成です。
水は潤いを与え、
油はエモリエント性を付与し、
界面活性剤は水と油を混ぜる。
超シンプルです!
そこに、品質を保持するための酸化防止剤やキレート剤、防腐剤などが付与されたり、
用途に合わせて顔料や香料、紫外線防止剤、オリジナリティを出すための成分(保湿剤や抗酸化成分、植物エキスなど)が添加されているのです。
ファンデーションに限らず、メイク製品というものは、
とっても雑に言うとスキンケア化粧品に顔料や染料を混合したようなものです。
乳液・クリーム状のベースに黄・赤・黒色の酸化鉄を混ぜれば肌色のリキッドファンデーションになります。
水分をうんと減らして、粉体の比率を増やせばスティックになり、
さらに油分も減らせばパウダーファンデーションのような組成になります。
2-2.ファンデーションとスキンケア化粧品の違いは”油”
大まかに言えば上記の通りなのですが、
ファンデーションの特性を出すために、実際には少し異なる点があります。
ファンデーションとスキンケア化粧品では求められるテクスチャーが違います。
また、付着性や撥水性・撥油性を考慮する必要があります。
蛇足ですが、付着性は粉体の形状でも異なります。
ここでは簡単な説明になってしまいますが、
正方形の粉体は落っこちてしまいそうですが、平たい粉体はくっついてくれそう。
そんなイメージです。
粉そのものだけではお肌から落っこちてしまうので、
少量のオイルを”つなぎ”のように使うとパウダーファンデーションになります。
この時、最も頻用されるオイルはミネラルオイルやワセリン、水添ポリデセン、リンゴ酸ジイソステアリルなどです。
一口に「オイル」といっても若干水に溶けやすいものから、まったく水に馴染まないものまでありますが、
ファンデーションで使われるオイル類はTHE 油。
水と馴染みが悪い、つまり耐水性が高く、汗などによる崩れを防ぐことができるオイルです。
ところで、私たちがリキッドファンデーションやクリームファンデーションを使用した後は、
フェイスパウダーなどでサラサラにしますよね^^
仕上げをせずに外に出ると、大気中のホコリやら花粉やらをキャッチしてしまいそうな…^^;笑
チークやアイシャドウなどもダマになってしまうし、お肌がベタベタな状態は嫌なものです。
そこで、活躍してくれるのがシリコーンオイルです。
シクロペンタシロキサンや、ジメチコンなど、
末尾に”~コン”や”~シロキサン”が付く成分です^0^
シリコーンオイルはなんと、オイルと同様に水をはじくのに、ベタベタしない!
水にも油にもないテクスチャーを演出することができます。
今、さりげなく”シリコーンオイル”と”オイル”は別分類のように書きましたが、
シリコーンオイルはオイルとも馴染みにくいという特徴を持ちます。
そのため、シリコーンオイルが配合されたメイクアップ製品は汗にも皮脂崩れにも強くなるのです。
最近では、フルオロアルキルシリコーンのような、一般のシリコーンオイルを超えて超撥水・超撥油性の成分も登場しました。
”フルオロ”とは、”フッ素が付いた”という意味です。
フライパンのテフロンコーティングと同じで、表面をフッ素加工すると
電気陰制度の高いフッ素から電子を奪うのは一苦労なので、分子間相互作用が小さくなるため、
水も油も付きにくくなる ⇒ 崩れにくいファンデーションとなるのです。
2-3.ファンデーションで使うオイルは肌に優しい
ファンデーションに多用されるオイル類(ミネラルオイルやワセリン等)とシリコーン油…
共通の特徴は、超安定ということです。
つまり、空気中に置いていても、肌の上に乗っけていてもなかなか変質しません。
美容が好きな方は必ず耳にしたことがある”ω3(オメガスリー)脂肪酸”。
実は、このオイルは変質します。
分子構造でいうと、端から3番目の炭素に二重結合があるから”ω3”という名前なのですが、
サントリー健康レポートHPより引用
https://health.suntory.co.jp/omega/library/omega3_6/
この二重結合は切れやすいので、分子が変質しやすいのです。
片手を繋いでも苦じゃないけど、いつも両手を繋いでいると動きづらくってしょうがないので、手を放したくなるのです。
天然の保湿クリームと言われる皮脂も、放っておくと酸化し、過酸化脂質という刺激性分になってしまいます。
一方、ミネラルオイルやワセリン、水添ポリイソブテンなどなどは、二重結合がありません。
シリコーンオイルは別の理由で変質しにくいのですが、ここでは省略(^^;)
小文字で結合エネルギーとか言い出します。
変質しないということは、反応しない=刺激にならない=安全性が高いということができます。
日中の長い時間お肌を守り、また使用期間も長いファンデーションには、安定性の高い油がメインの基材に使われています。
使用中に変な匂いがしたら嫌ですしね(^^;)笑
中には、肌の柔軟効果や、その化粧品の価値を高めるために、植物オイルが使われることもよくあります。
それらのオイルは変質して刺激になりやすいので、一日の終わりには、しっかりオフしてあげましょう。
2-4.皮膚は呼吸しないし、ファンデは毛穴に入らない
ファンデーションに使用されるオイルは変質しにくい物を使っていることはわかりましたが、こんな不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
「ファンデーションをすると皮膚が呼吸を出来なくなる💦」
「ファンデーションが毛穴に詰まって毛穴目立ちの原因になる💦」
結論から言うと、どちらも心配無用です。
ヒトは進化の過程で肺が進化し、皮膚呼吸の必要が無くなりました。
今でもヒト皮膚はごく僅かに酸素を吸収して、二酸化炭素を排出(呼吸)をしているようですが、
肺の呼吸能力を考えれば、殆ど無視できるほど小さいと言えます。
さらに、ファンデーションはある程度スキマのある薄い膜なので、毛穴や汗腺を塞ぐこともありません。
ファンデーションを付けていても、ちゃんと汗かきますもんね(^^;)
皮膚呼吸もちゃんとしています。
そもそもファンデーションの粒子は毛穴の大きさより大きいため、毛穴に入り込むことはないのです。
”毛穴目立ち”の要因についてはこちらの記事をご参照ください。
▶参照:『ファンデ100問100答 「ファンデをつけると、肌は呼吸しなくなるの?」(資生堂)』
2-5.ファンデーションに使われる顔料の安全性
化粧品の売り文句としてよく使われる「着色料不使用」。
メイクアップ製品では顔料や染料が使用されますが、それらの安全性は問題ないのでしょうか?
大前提として、全ての物質に”100%安全”と言い切ることはできません。
水だって、飲み過ぎれば水中毒になってしまいます。
その上で、化粧品を色づける成分について、解説していきます。
有機色素(タール色素)は安全性が高い
ファンデーションの着色剤は、殆どが顔料です。
そして、顔料は比較的安全な成分と言えます。
特に有機顔料(タール色素)は、安全性の高い成分の一つです。
有機顔料は固体として肌の上に乗っかっています。
ほとんどの場合、物質が反応するときには、溶ける必要があるので、固体として存在している顔料は反応性が低く、安全性が高いのです。
”タール色素”は良くないイメージを持っている方も多い成分ですから、意外ですよね。
金属顔料(ミネラル成分)は表面処理に依る
もう一つ、顔料には”金属顔料”というものがあります。
赤・黄・黒の酸化鉄や、白の酸化亜鉛、酸化チタンなど鉱物(ミネラル)を使った顔料です。
これらの安全性は、基本的には高いですが、金属アレルギーの方は気を付けた方が良い場合があります。
金属顔料は、全てのファンデーションに使用されていると言っても過言ではありません。
その多くはシリコーンオイルや界面活性剤などで表面処理されており、撥水性・撥油性を高めたり、粉体同士の凝集を防止したりしています。
そのため、肌と金属が直接触れることはありません。比較的安全な成分と言えるでしょう。
一方、”肌に優しい”でお馴染みのミネラルファンデーションの場合、
金属顔料に表面処理がされていないため汗などの水に金属成分が溶出し、皮膚のタンパク質と結合することでアレルギー反応が出てしまう懸念があるのです。
金属アレルギーの自覚がある方は、ミネラルファンデーションの使用前に必ずカウンターでタッチアップしてもらい、一日様子を観察しましょう。
私は金属アレルギーですが、ミネラルファンデでは感作されませんでした♪^^
ここでのまとめです。
- ミネラル入りのファンデは珍しくない
- 金属顔料をコーティングしてないミネラルファンデーションは却って安全性が低下する
2-6.染料の安全性
一方で、染料は顔料と異なり水に溶ける性質があります。
角層に浸透し、着色するため色が落ちづらいという特徴があります。
染料は、ミネラル成分と同様にタンパク質と結合するとアレルゲンとなる懸念があります。
健常な皮膚の場合、ある程度の深さで浸透を止めることができますが
バリア機能が低下した皮膚では、染料が浸透しやすく、アレルギーリスクが高まります。
ファンデーションで染料を使用することは稀ですが、最近では「落ちないコスメ」としてチークやリップコスメに使われることも。
敏感肌の自覚がある方は避けるようにしましょう。
2-7.エタノール入りファンデーションで肌が荒れる?
ファンデーションでは、溶剤としてエタノールを配合することがあります。
ファンデーションに限った話ではありませんが、
アルコール過敏の方は、エタノール入りは避けてください。
エタノールが悪の物質と言いたい訳ではなく、
当然のことながら、エタノールに限らず合わない成分がある場合は避ける必要があるのです。
アルコールパッチテストは様々なところで行われていて、
エタノールによるかぶれは自覚している方が多いと思います。
また、春時期は花粉症の影響などで肌が過敏になりやすいので、これまでなんともなかった方が、敏感に感じることもあります。
化粧品の場合、刺激を感じてもすぐに使用を辞めれば炎症は最小限で抑えられます。
お肌の状態が良いときは、もちろん問題なく使用ができますので、
エタノール由来のさらりとしたテクスチャーや、スキンケアでは浸透効果など、エタノールにしかできない役割を楽しんでみてください^^
3.ファンデーションで肌荒れする真因は「クレンジングが適切でないから」
上記から、肌荒れの要因が”バリア機能の低下”と考えた場合、
ファンデーション自体で肌荒れするケースは下記の2通りが考えられます。
- 金属アレルギーの方のミネラルファンデーションの利用
- アルコール過敏の方のエタノール入りファンデーションの利用
そもそも、ファンデーションはチリやほこり、大気汚染や紫外線などから肌を保護してくれるもの。
ところが、実際には「ファンデーションで肌が荒れる」と感じる人は少なくありません。
その真因はなんでしょうか?
3-1.クレンジングが不足している場合
使用しているファンデーションに対してクレンジング力が不足している場合、
ファンデーションではなく残った皮脂汚れが要因で肌荒れを引き起こします。
肌の上に分泌された皮脂は、フレッシュな状態では皮膚を柔軟にし、保湿をしてくれる天然のクリームです。
しかし、皮脂はやがて皮膚常在菌によって分解され脂肪酸となります。
脂肪酸は酸化されると刺激成分となるため、肌荒れを引き起こす懸念があるのです。
しっかり落とそうとゴシゴシと摩擦してしまうと、肌に大きな負担がかかります。
また、クレンジング力の弱さゆえに洗浄成分を肌に長く置くことになると、
ファンデーションよりも皮脂や細胞間脂質、NMFなどの保湿成分の方が優先的に流出してしまうため肌が乾燥しやすくなってしまいます。
「やさしいクレンジング」とは、「洗浄力の弱いクレンジング」ではなく「擦らず短時間で落とせるクレンジング」なのです。
- 皮脂汚れが残ると肌荒れの要因に。
- クレンジングに時間がかかると保湿成分まで流出する。
3-2.クレンジング力が強すぎる場合
使用しているファンデーションに対してクレンジングが強すぎる場合、
ファンデーションだけではなく皮脂や細胞間脂質、NMFなどの保湿成分まで取り去ってしまう懸念があります。
すると、バリア機能が低下し乾燥やターンオーバーの異常亢進、それに伴う敏感肌やニキビなど、様々な肌トラブルを引き起こすのです。
あれ?「クレンジング力が弱すぎる場合」と内容が被っていますね。
これには理由があります。
3-3.「適切なクレンジング」とは、「擦らず短時間で落とせるクレンジング」
”クレンジング”という行為をする限り、肌の保湿成分を洗い流すリスクは伴います。
私は、ファンデーションで肌荒れする真因はここにあると考えます。
”ファンデーション”という耐水性・耐油性の膜を纏っている限り、それを落とそうとすればファンデーションより溶け出しやすい保湿成分が流れ出てしまうのは、仕方のないことです。
そのリスクを最小限に抑える方法は「短時間でクレンジングをする」ことなのです。
3-4.「適切なクレンジング」の選び方
ミネラルファンデーションや「石けん落ち」を謳うファンデーションであれば、
ローション、ジェル、ミルクなどの界面活性剤型の洗浄力が弱いクレンジングでも良いでしょう。
(くれぐれも擦らないで!)
リキッド、クリームなどのファンデーションや、「ロングラスティング」を謳っているファンデーションであれば、オイルやバームなどの油分が多く、洗浄力が高いクレンジングを選びましょう。
※「クレンジングの違い」については、こちらをご参照ください。
一番失敗しない方法は、ファンデーションと同じブランドのクレンジングを選ぶことです。
ファンデーションを開発する際、クレンジングテストは同ブランドのものを使うためです。
また、ファンデーションのテスターをもらい、落とせるクレンジングを探すのもいいでしょう。
私は
・シリコーン系界面活性剤入りのクレンジング
・油脂由来のクレンジング
・界面活性剤系のクレンジングジェル
を常備して、好きなファンデーションを使えるようにしています!
4.まとめ
今日のポイントを、以下にまとめます。
- ファンデーションは外部の刺激から肌を保護するもの
- ファンデーションの塗布自体で肌が荒れることは殆どない(一部例を除く)
- ファンデーションに対してクレンジング力が適切でないと、肌荒れを引き起こす懸念が有る
- 適切なクレンジングを選ぶには、テスターで実際に試してみるか、同ブランドのアイテムを選ぶこと
クレンジングをした後は、必ずその後のスキンケアでバリア機能を補助してあげましょう。
適切なクレンジングが出来ていれば、ある程度失った保湿成分は化粧品で十分に補える筈です。
先日、とある勉強会で
「ファンデーションは、塗ったら綺麗になれるものなのに、“肌に悪い”と思っているお客様がいらっしゃる」
というお話を聞きました。
化粧品は、人を美しくし、魅力を増し、皮膚を健やかに保つもの。
正しくメイクアップすることで、誰もが必ず美しくなります。
化粧品の知識を味方につけて、楽しく賢く美しくなりましょう!