梅雨時期になると気になるくせ毛。
くせ毛はスタイリングがしづらいだけでなく、うねりの増加に伴い毛髪の艶も低下してしまいます。
また、加齢によってうねりが強まることも知られています。
一体、ストレート毛と何が違うのでしょうか?
湿気で毛髪がうねる原因は、オルトコルテックス・パラコルテックスというケラチンタンパクの分布にあります。
その引き金となるのは遺伝、ダメージ、エイジングなど様々。
毛髪の構造を知って、科学的アプローチからくせ毛対策をしていきましょう!
Index
1.くせ毛の原因はオルトコルテックス・パラコルテックス分布の差
毛髪にはくせだけでなく、色や太さなど様々な個性があります。
その個性を決める大きな要因は毛髪中の”コルテックス”という部分にあります。
髪色の由来となるメラニンや、毛髪の水分・油分の大半がコルテックスに存在しています。
毛髪構造の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
コルテックス細胞には、オルトコルテックス, パラコルテックスの2種類あります。
違いは、アミノ酸組成。
タンパク質とはアミノ酸が長く繋がったものですが、
何のアミノ酸から成るかによって性質が変化するのです。
特に、シスチンという毛髪において重要なアミノ酸の含有率は、
- オルトコルテックス:5%
- パラコルテックス:15%
シスチンは疎水性という水を含みにくい性質をしているため、
シスチン含有量の多いパラコルテックスが多い毛髪は膨潤しにくいと推察できます。
この2種のコルテックスが毛髪内でバランスよく配置されていると直毛となります。
逆に、図のようにコルテックスの分布が偏っていると一方は水を含んで膨潤し、一方は膨潤しにくいために、ねじれが出てしまいます。
↓
これがくせ毛です!
くせ毛の毛髪断面は、2種のコルテックスの吸湿率の差故に楕円形をしているのだとか。
ここからわかることは、アイロンなどの熱で直毛にしたように見えても、水を含むとうねりが復活してしまうということです。
梅雨時はどうしてもうねってしまうわけですね(><)
オルトクルテックス・パラコルテックスの違いはもう一つ、構造の違いが挙げられます。
オルトコルテックスは扇状の疎な構造。
パラコルテックスはストレートの密な構造です。
理美容的には、疎なオルトコルテックスが多い髪質の方が薬剤が浸透しやすいのだそうです。
2.オルトコルテックス・パラコルテックス偏りの原因
以上のようなオルトコルテックス・パラコルテックスの分布差は遺伝と考えられていますが、正確に遺伝を証明した研究はないのだとか。
くせ毛の原因として毛根の形状が挙げられることもありますが、
毛根の形状が曲がることによるくせ毛は、アフリカンなどの非常に強いくせ毛の人種に見られるもののようです。
また、エイジングやヘアカラー施術などのダメージを受けるとうねりが増長しますが、
どのようなしくみでその偏りが生じるのかは、未だ解明されていません。
女性であれば出産の前後で髪質が変わるという体験談も多く聞かれます。
確かに言えることは、ダメージ毛は疎水性を失っているために水分が湿潤しやすい状態であるためうねりが出やすいということです。
3.くせ毛の対策
要因はいまいち不明であるにせよ、肝心なのはくせ毛のケア。
対策法を知って、自分に合った方法を選択していきましょう!
3-1.パーマなどのサロンケア
最も手っ取り早いのは、パーマなどで毛髪内部の構造を変えることです。
毛髪は4つの化学結合によって形作られていますが、そのうち最もな強固な結合がS-S結合(シスチン結合)です。
1剤である還元剤によってS-S結合を切断し、毛髪が軟化した状態で形を整えます。
その後、2剤である酸化剤によってS-S結合を再結合します。
この時、全ての”S”が再結合できる訳ではなく、近くに相方が見つからなかった”ーSH”は酸化され、ダメージホールとなってしまいます。
これがパーマによるダメージの要因です。
このような一定のリスクはあるものの、確かに毛髪形状を変えることが可能です。
カラーは薬剤で決まり、パーマは美容師の腕で決まると言われるように、
自分の髪質や好みを把握しているような、信頼できるサロンでお手入れするのがベストでしょう。
3-2.シャンプー・トリートメント・ヘアオイルなどによるホームケア
くせ毛は毛髪が水分を含むことによって増長します。
健常な毛髪は、くせ毛であっても疎水性を示すため、毛髪の湿潤を防いでくれます。
つまり、ホームケアで最も効果的なのは”ダメージを与えないこと”。
毛髪のダメージケアについては、下記記事をご参照ください。
くせ毛におすすめ成分①ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン(羊毛)
とはいえ、紫外線やヘアカラーなど、ある程度のダメージは受けてしまうものです。
そのような時には、毛髪に疎水性を与えることが必要です。
例えば、毛髪に吸着力のあるカチオンを持つ加水分解ケラチンと疎水性を示す高級アルキル鎖が繋がっているような構造の
「ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン(羊毛)」は、毛髪表面を疎水化し、うねりを抑制する効果が知られています。
毛髪表面が疎水状態だと毛髪が絡まりにくくなるため、ヘアドライの速乾性が改善し、熱ダメージを抑制できるなどのメリットもあります。
成和化成チャンネルより引用
くせ毛におすすめ成分②ジヒドロキシプロピルアルギニンHCl
もう一つのアプローチとして、毛髪に予め保湿させてしまうという手があります。
例えば、アミノ酸である「アルギニン」に「グリセリン」を結合させた構造のジヒドロキシプロピルアルギニンHClは、
アルギニン部分が毛髪に吸着することで、洗い流し後もグリセリンの保湿効果が持続します。
くせ毛におすすめ成分③シリコーンオイル
毛髪に疎水性をダイレクトに与えるならば、ヘアオイルが有効です。
シリコーンオイルは疎水性を示す上に、潤滑性に優れ、毛髪の摩擦を低減する効果もあります。
ベタ付き感の少ない独特なテクスチャーのオイルです。
とはいえ、一口に”シリコーンオイル”といっても様々な成分があります。
シクロペンタシロキサンがメインのものはとてもさらさらとして使いやすいですが、揮発性が高いため毛髪に残存しにくい特徴があります。
このオイルは単独で使われるというよりは、相溶性のあるジメチコン、アモジメチコンの効果を狙ってキャリアオイル様に配合されることが多いです。
ジメチコン類は重合度によってテクスチャーが全く異なるために全成分のみでは語れないのですが、
好みによっては重めに感じることもあるかもしれません。
くせ毛におすすめ成分④油脂類
ヘアオイルとして名高い「アルガンオイル(アルガニアスピノサ核油)」「マカデミア種子油」「シアバター(シア脂)」「馬油」「椿油」などなど。
オイル故の疎水性を示しながら、毛髪への馴染みも良いオイルです。
酸化しやすいために紫外線の影響などで時間が経つと臭う懸念があるのがデメリット。
特に、シア脂は酸化臭が出やすいです💦
とはいえ、オイルは精製度によって抗酸化物質の含有率が変わるため、一概に酸化しやすいとは言えません。
そこで、おすすめなのはオーガニック化粧品のヘアオイル。
エコサートなどのオーガニック認証を取っているものであると安心です。
「安心」というのは、肌に優しいという意味ではなく「抗酸化物質が含まれている」という安心感です。
オーガニック化粧品は精製工程に制限があるため不純物を含みやすい一方、抗酸化物も取り除かずに原料にすることが可能です。
肌にとっては一定のリスクになりますが、毛髪は刺激などを感じないため問題ありません。
油脂系のオイルは”濡れ感”を演出することもできるので、私もよく使っています。
メルヴィータの ビオオイル アルガンオイル ローズが香りがとっても良くてオススメです。
Melvita(メルヴィータ) ビオオイル アルガンオイル ローズ 50ml
ザ・プロダクトのヘアワックスも手に薄く伸ばして均一に付けやすいし、柑橘系の爽やかな香りも好きでよく使っています。
メルヴィータ&オーガニックについては下記記事をご参照ください!
3-3.頭皮ケア(食事・入浴・マッサージ・睡眠)
上記の通り、毛髪ダメージの進行に伴いうねりは増長されます。
ダメージを与えないケアはもちろん、ダメージに強い毛髪を作ることも重要です。
健康な毛髪を作るのは、頭皮にある毛母細胞。
この頭皮が健康でなければ、ハリ・コシのある美しい毛髪を作ることは出来ません。
毛髪の殆どはケラチンというタンパク質から作られています。
タンパク質そのものはもちろん、タンパク質合成に関わるビタミン、ミネラルなど他の栄養素もバランスよく摂りましょう。
加えて、頭皮に栄養を運ぶために血液をしっかり巡らせるケアも有効です。
入浴やマッサージ、睡眠をしっかりとるなど要は「健康」であることが毛髪にとっては最も効果的なケアなのです。
4.まとめ
以上、くせ毛の原因と対策についてまとめてみました。
ポイントは下記の通りです。
- くせ毛の原因はオルトコルテックス・パラコルテックスが不均一に分布しているから
- その理由は不明だが、ダメージやエイジングによって増長する。
- くせ毛対策には、パーマ処理・ダメージケア・毛髪の疎水化が有効
私自身、昨年までものすごいうねり毛に悩んでおりました…
長年ショートヘアであったのですが、久しぶりに伸ばしてみたらバッサバサが止まらず💦
「髪質変わったのかな?」とも思ったのですが、母からは「あなたくせ毛だったわよ」と言われ、そうだったかなー?(^^;と諦めていました。
↑2017年の私(^^;)
ショートヘア時代はファッション系のスタイルだったのでパーマ・カラーダメージが酷く、
これ以上手の施しようがなかったんですよね…(遠い目)
髪が少し伸びてきてからは“結ぶ”の一択!
そんな私が、最近やっとアイロン無しでも髪を下せるようになりました…(´;ω;`)!
↑先日撮ったPR写真笑
中学生の時からヘアケアはずっとサロン専売品。
成分をわかるようになってからは洗浄成分や補修成分も寄り好んで使ってきた私ですが、
ジヒドロキシプロピルアルギニンHCl訴求のシャントリで少し落ち着きを取り戻し、
アルガンオイルのアフターケアでツヤ感を取り戻したものの、
夜までは保たないし、雨の日は終わってました。
実際、ヘアケアアイテムでは一定の効果はあれど限界が。
結論、私のうねり毛を最も助長させていた原因は食生活と睡眠不足でした。
独立して1年かけて、生活習慣を改善。
やっと毛髪のうねりが収まってきたのです。
化粧品は、魔法のアイテムではありません。
美しくなる答えは、意外と自分の中にあるものです。
闇雲にトライし続けずに、一度立ち止まって根本要因を考えてみると、
心も穏やかにケアを続けることができますよ(^_-)-☆
参考
1)花王株式会社(2009)「ヒトのくせ毛の微細構造」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/43/3/43_3_201/_pdf> 2020年5月28日アクセス.