紫外線吸収剤の成分にはどんな種類があって、何が違うの?

紫外線防御剤には、「紫外線散乱剤」「紫外線吸収剤」の2種類があります。

紫外線散乱剤は主に「酸化亜鉛」「酸化チタン」の2種類が使われていてとてもシンプルですが、
紫外線吸収剤は種類がたくさんあって、何がどう違うのかがわかりづらいですよね。

本記事では、紫外線吸収剤の成分の違いについて、簡単にまとめていこうと思います!
お手持ちのサンスクリーンの全成分表と見比べながら、特徴を見つけてみましょう!

 

1.紫外線吸収剤はどんな成分?

紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することによって、皮膚へ紫外線が到達することを防ぐ成分です。

紫外線吸収剤が紫外線を浴びると、励起状態 (れいきじょうたい)というスーパーサイヤ人状態になります。
つまり、エネルギーを沢山もっている状態です。紫外線はエネルギーの強い光線なので、これを受け取る訳ですね。

ところが、時間が立つとエネルギーは熱に変換されてどこかへ行ってしまうので、元の状態(基底状態)に戻ります。
スーパーサイヤ人のしゅわしゅわが解けるイメージです。

再び紫外線を浴びると励起状態となり、エネルギーを熱に変換して基底状態に戻る
これを繰り返して紫外線から人体を守ってくれているのです。

この時に発生する熱エネルギーは非常に小さいので、皮膚の水分を奪うことは出来ません。
もともと、紫外線からもらったエネルギーを熱に変換しているので、
吸収剤の放熱で皮膚の水分が無くなるならば紫外線を浴びた途端に皮膚はからっからになってしまいます(^^;)

ちなみに、日本で使用することができる紫外線吸収剤は厚生労働大臣が設けるポジティブリストに記載されている成分のみで、配合上限が定められています。
つまり設けられている基準を守っていれば、安全に使用することが出来るということを示しているのです。

とはいえ、紫外線吸収剤の中には刺激を感じやすい成分もあることは事実。
ポジティブリスト中の「粘膜に使用されることがある化粧品」に使用不可の成分は比較的刺激が出やすいと考えられますので、敏感肌の方は着目点にするとよさそうです。

もちろん、人には個人差がありますから紫外線吸収剤に限らず、成分によって刺激を感じてしまう人もいます

化粧品を使ってみて、刺激を感じないのであればむやみに怖がる必要はありません。
心配な方は暫くは腕の内側に使ってみて、問題なければ顔に使用するようにしてみましょう。
このことは、サンスクリーンに限らず全てのスキンケア製品に言えることです!

 

2.紫外線吸収剤の違いは、「吸収波長」と「溶解性」!

紫外線吸収剤の形状は液状や粉末と様々ですが、製剤中では均一に溶解させられます。
また色味は黄色や褐色などもありますが、肌に塗ってしまえばほとんど無色で気になりません。

という訳で、突然結論を言ってしまいますが
たくさんある紫外線吸収剤の主な違いは「吸収波長」「溶解性」です。

 2-1.吸収波長によって成分を使い分ける

一口に”紫外線”といえど、その波長は100~400nmと幅が広いです。
そのため、UV-C(100~280nm)UV-B(280~315nm)UV-A(315~400nm)と波長によって3種類に分類されています。
このうち地表に届くUV-B, UV-Aをカットするのがサンスクリーンの目的です!

ところが成分によって吸収できる波長が異なるため、複数種の成分を組み合わせることで幅広い波長の紫外線から肌を守る工夫がされています。

例えば、最も汎用されている紫外線吸収剤である「メトキシメイヒ酸エチルヘキシル」という成分は、極大吸収波長が308nmUV-B領域
この成分をいくら沢山入れたって(配合上限がありますが)、UV-A領域の紫外線はカットできないのです。

「t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン」のような極大吸収波長が357nmUV-A領域の成分と併用することで、紫外線の防御領域を広げることが出来るのです。

 

 2-2.溶解性によって使える製剤が異なる

もう一つの大きな違いは、「溶解性」です。

化粧品の基剤は殆どが水・油・シリコーンオイルで占めており、異なる性質の材料を均一に混ぜ合わせるために仲立ちとなる界面活性剤が使われています。

紫外線吸収剤の中には水に溶けやすい成分油に溶けやすい成分シリコーンオイルに溶けやすい成分など様々な性質が存在します。

一般的に、サンスクリーン剤は耐水性・耐油性が求められるために水にも油にも馴染みにくいシリコーンオイルが多く使われるのですが、
最近は、日焼け止め効果はサンスクリーンに留まらず化粧下地やファンデーションといったベースメイクアップ化粧品にも求められるようになっているため、剤型に合わせて様々な成分が必要になるのです。

また、多くのサンスクリーン剤は乳化系で水相中に油滴が分散しているので、水分が揮発すると肌の上ではミクロレベルで隙間が発生してしまいます。
サンスクリーン塗布膜

水溶性と油溶性の紫外線吸収剤を併用すると、この隙間を防いで効率よく紫外線カット効果を発現することができるのです。

 

 2-4.主要な紫外線吸収剤の種類一覧

吸収波長ごとに、代表的な紫外線吸収剤を一覧表にまとめてみました!
お持ちのサンスクリーン剤にはどのような紫外線吸収剤が使われているでしょうか?

  〇UV-B領域紫外線防御剤

紫外線吸収剤一覧

  〇UV-B~UV-A領域紫外線防御剤

紫外線吸収剤一覧

  〇UV-A領域紫外線防御剤

紫外線吸収剤一覧

参考:本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10.
宇山 光男, 他(2015)「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」化粧品成分ガイド 第6版,92-93.

3.「紫外線吸収剤の種類が多いから肌に刺激」は間違い

このように、紫外線吸収剤は様々な性質を持ち、処方に合わせた成分が選択されます。

化粧品成分解析や日焼け止めオススメ記事などで「紫外線吸収剤の種類が多いと刺激が強い」のような内容を見かけますが、
紫外線吸収剤の配合組み合わせによる相乗効果によって、配合最小量で肌に刺激が少なくなるように設計されているのです。

また、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤の併用によっても相乗効果を発揮し、効率的に紫外線カットすることが出来ます。

刺激を感じない肌質なのに、怖くない成分を避けてノンケミカル処方(紫外線吸収剤フリー)を選び、
肌に最も有害と言っても過言ではない紫外線を浴びてしまっては、本末転倒です。

今回、紫外線吸収剤には多くの種類があることや、様々な性質によって使い分けをされることが伝わったのではないかと思います。

お手持ちのサンスクリーン剤はどのような成分を使っているでしょうか?
「紫外線吸収剤が沢山入っていたら、刺激が少なそう!」と判断してもいいかもしれません。

4.まとめ

✔紫外線吸収剤は紫外線を吸収して熱エネルギーに変換する成分
✔紫外線吸収剤は成分によって溶解性が異なり、様々な吸収波長を持つ
✔効率的な紫外線カットのためには様々な紫外線防御剤を併用するのが好ましい

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